1966年初出 楳図かずお
秋田書店サンデーコミックス 全3巻

私が初めて手にとったホラー漫画がこれ。
当時はホラーなんて言葉すらも知らぬ青っ洟たらした小学生でございました。
恐怖コミックス、なんてロゴがでかでかと表紙には踊ってて躊躇した記憶はあるんですが、えてして子供ってのは怪談とか宇宙人とか大好きなもので。
書店で立ち読みすること30分、多分顔面蒼白だったことと思います。
棚に本を戻す手は小刻みに震え、二の腕はびっしりと鳥肌で覆われておりました。
心の底から読んだことを後悔。
なにもかもが怖い。
物影が怖い。
物音が怖い。
自宅までの道のりを歩くことすら怖い。
特に「うばわれた心臓」という短編は長い間私のトラウマとなりました。
なんでこんな恐ろしい話を描くんだよ、と半べそをかいて布団にくるまった眠れぬ夜。
それが今やホラー大好き中年に化けてて好んでホラー見てる、ってんだから、ほんと人生わからないものです。
今回久しぶりに読み返してみたんですが、やっぱり楳図先生はホラーがどういうものなのか、ちゃんとわかってらっしゃる、と再認識しました。
歳を重ねた分、さすがに私もホラー擦れしちゃってて、あらためて怖い、という感情は湧いてこなかったんですが、第一人者だけはあって各話にブレがない、と感心。
脇目もふらず、テーマである「恐怖」の感情を見事浮き彫りにしている、とでもいうか。
近年、Jホラーブームなんてのもありましたし、今の若い読者がこれを読んでどう感じるのか、ちょっと予測できない部分はあるんですが、怖さというものの本質がぎゅっとつまった連作短編集であることは間違いない、と思います。
他にも優れた短編がたくさん存在しますが、私は原体験もあって、このシリーズがいまだに印象深いですね。