無用ノ介

1967年初出 さいとうたかを
リイド社SPコミックス 全8巻

隻眼の賞金稼ぎ、無用ノ介の流浪の日々を描いた時代劇。

初期のプロットには当時さいとうプロに所属していた小池一夫も関わっている、とどこかで聞いた記憶があるのですが、真偽のほどは定かではなし。

なにぶん賞金稼ぎの話なんで、どこか影のある暗いシリーズなのかな、と想像していたんですが、バンバン賞金首がぶった切られていく凄惨な物語の割には各話の語り口は不思議に健全だったりします。

60年代後期の少年マガジンに掲載された作品、ということもあるのでしょうが、主人公無用ノ介が人斬りの割には妙に正義漢で情に厚いんですね。

人の生死に関わるものとしての陰惨さ、苦悩みたいなものより、テレビ時代劇風の勧善懲悪な小気味よさ、ダークヒーローとしての主人公の孤独に焦点はあてられがち。

一方的に白土三平みたいな感じなのかな?と思っていた私にとっては幾分肩すかしではありました。

野良犬剣法でがむしゃらに生き抜こうとする無用ノ介の活躍は、読んでいて普通に痛快なんですが、個人的にはここからさらに「賞金稼ぎとして生きていく自分とはなにか」にまで掘り下げていって欲しかった。

最終話で近いところでようやく踏み込んでくるんですけどね、なんとなく「またどこかで会おう」みたいな感じで終わっちゃいましたね。

ま、少年誌の時代劇エンターティメントとしては申し分ないと思います。

当時にしては、時代考証をおろそかにしない物語の背景も、緻密な作話も、高い画力も突出している、と思う。

あとはまあ、読む人が時代劇に何を求めるか、ですね。

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