1992年初出 水木しげる
講談社漫画文庫
作者の自伝。
怪異を頭ごなしに科学で否定せず、拝み屋ならではの論理体系で解いてみせるのんのんばあの存在が実に魅力的ですが、まあ、実話ベースですんでオチもなければ特にドラマ性もなく、ああ、そういうものなのかもしれないなあ、で終わってしまうってのはありますね。
昭和6年の鳥取を舞台に、独特の価値観に支えられた日々の生活の描写は興味深いんですが、人の生死でさえいつもの水木しげる流に淡々とつむがれてゆくので、NHKのドラマがきっかけでこの本に触れた人は拍子抜けしたかもしれません。
盛り上がる場面とか、皆無ですからね。
まあ、それこそが作者の味だったりするわけですけど。
何を描いても絶対に水木しげるになる、というのはある意味凄いな、とは思いました。
個人的には怪異と脱力感、ばかばかしさ漂う70年代の創作の方が好きですね。