2013 日本
監督 石井裕也
脚本 渡辺謙作

こういう作品が高く評価されるのは素晴らしいと思う
新しい辞書作りに挑む人々の姿を描いた『お仕事の裏側』映画。
そうだったのか、と驚くことばかりだったのは確かですね。
辞書一冊作るのに平均10年から20年かかる、ってのにまずは腰抜かしたんですが、たった一つの記述間違いも許されない、ってのにもびっくり。
こんなの昨今流行の退職代行サービスとか、時間外労働の上限規制とか、真に受けてちゃ何もできない類の仕事であって。
下手すりゃ生涯かけて辞書一冊しか作れませんでした、なんてことも十分ありうるわけで。
もう民間の出版社でやれる業務じゃないやん、と思って観てたら案の定、民間では色々厳しいよう。
おそらくこの先、成立しなくなる仕事だと思うんですね、辞書作りって。
ネットが辞書にとって代わるのは明白。
描かれてるのは、数年後には消えてしまうかもしれない部署で、たった1冊の辞書を作るために寝食を惜しんで取り組む編集部員たちの姿。
恐ろしく地味で、単調な作業の連続ながらも、そこに映し出されるのはプロフェッショナルたちの譲れぬ矜持。
ぶっちゃけたいしたことは何も起こらないんです。
物語は辞書編集部に移動させられた新人編集者を追う形で進んでいくんですが、普通に恋愛して、昇進して、ってな感じで、多少の波風はあれど恐ろしく平坦。
でもそれが15年もの歳月を費やしたストーリーだとね、さすがに感慨深さもひとしおで。
世の中に、完成するまで15年かかる仕事とか、あんまりないと思うんですよね。
こうして日本語の文化が守られてるのか、と思うとなにやら静かな感動があったりする。
主人公である馬締光也を演じた松田龍平の演技も秀逸で。
こうもすっとぼけたコミュ障を演じられる人って、他になかなかいないと思うんですね。
ムードメーカーな西岡正志を演じたオダギリジョーの軽薄でちゃらんぽらんな演技も良かった。
なんだろ、どこか昭和の日本映画っぽい佇まいがあるんですよね。
語弊があるかもしれませんが、小津安二郎とか、あのあたりの巨匠の。
ひょっとしたら作品の内容より、題材の特異さに惹きつけられてるのかもしれませんが、最後まで退屈しなかったことは確か。
静かなる熱情がスクリーンから伝わってくる秀作だったと思いますね。
こういう映画って、貴重な気がします。
タイトルもよくできてるわ(これは原作の功績か)。
ねじレート 80/100

