2019 日本
監督 白石和彌
脚本 加藤正人

そつなくやった、って感じっすかね(監督が)
ギャンブル依存症な男と内縁の妻、その娘の3人家族の、港町での暮らしを描いた人間ドラマ。
香取慎吾が主演に抜擢され、その演技が高く評価されたことが話題の一作ですが、なんだろ、SMAP時代から知ってる人間からしてみりゃ「あー慎吾ちゃんも老けたなあ」が第一印象ですかね。
もともと香取慎吾って、さほど演技うまくないというか、役者志向じゃなかったと思うんですよ(詳しくはしらんが)。
顕著に私の記憶に残ってるのは2006年のテレビドラマ『西遊記』で、ああこれ、やばいぐらいタレントさんの火遊びだな、って。
せめて堺正章(前任の孫悟空役)の器用さの半分もありゃあなあ、なんて思ったもんです。
そんな慎吾ちゃんが急に演技上手くなるわけないだろ、と思って見てたんですが、うーん、どうだろ、まあ、雰囲気はありましたね。
ハードルは高かった、と思うんです。
話さない演技が強要される場面、結構多かったですしね。
プロの役者でも難しいって話ですよ、表情と佇まいで語れ、とか。
基本、仏頂面でなんとかクリアしてましたけど、これは白石監督の演出のおかげもあったと思いますね。
あんまりね、真正面から撮ってないんですよね、慎吾ちゃんを。
これ以上はヤバイ、ってギリギリのタイムでカメラを余所にふってた、ないしは角度を調節してた気がする。
やっぱり私たちの先入観もありますしね、元アイドルという。
『ブルーワーカーのギャンブル依存症を演じてくれ』って言われてもそりゃ隠しきれないものはありますよ、これまでの経歴が経歴だから。
なので重苦しく、重厚なドラマとは裏腹に、意図するところとは別の部分でスター映画になってたように思いますね。
慎吾ちゃんが今もスターかどうかはさておき、香取慎吾がやさぐれたオッサンを演じるという事実が作品の価値につながってたように思います。
その観点で語るなら、結果的に、やはりこれは慎吾ちゃんのファンのための映画だったんじゃないかな、って。
なぜ白石監督が香取慎吾を抜擢したのかわかりませんが、少なからずテコ入れの意味もあったと思いますね。
オリジナル脚本で映画撮る、って今の時代、めったにないことですから。
ましてや広く広義にウケそうなエンタメでもアクションでもない。
穿った見方ですが、何とか商業的に成立させるためのコマだったのでは、と。
もし主演が名も知れぬ劇団の中堅俳優とかだったら絶対ここまで話題になってなかった、と思うんですね。
ま、物語自体はダメ男の転落と再生が描かれてそれなりに興味深かったです。
特に転落ぶりが半端なくて、いったいこいつはどこまで落ちぶれていくんだ、と怖くなっていくほど。
手を差し伸べてくれた人を次々と裏切っていくんですよね。
容赦ない作劇、と思う反面、ギャンブル中毒って誇張なくこんなものなんだろうなあ、と思ったり。
サスペンス味はあんまり強くありません。
犯人を考察することもなければ、物語の主筋になってるわけでもない。
途中で実行犯が逮捕されるんですけどね、動機もなにも追及されぬままですしね。
事件は、主人公をさらに追い詰めるための材料でしかない。
しかしまあ、こんな風に支えてくれる人が居るケースって、ほんと稀なんだろうな、と思います。
たいていは救いなく、最後は遠洋マグロ漁船だったりしますから(知らんけど)。
ダメ人間に対するエールなんでしょうかね、突き詰めれば。
ダメでも可愛げがありゃ手を差し伸べてくれる人はいる、みたいな。
身も蓋もねえな。
私なんかは意地が悪いんで、最後もう一度裏切って競艇行くシーンで終わってくれ、などと夢想したりもしましたが、さすがにラストはハッピーエンド風。
個人的には香取慎吾が主演でない『凪待ち』を見てみたかった、と少し思いました。
綾野剛とか似合いそうに思うんだけど、それはもう日本で一番悪いやつら(2016)でやったか。
ねじレート 70/100

