2016 日本
監督、脚本 李相日

サスペンスというより、重厚な群像劇
警察の捜査をかわし、1年間逃亡を続ける殺人犯の正体を探るサスペンス、というか人間ドラマ。
物語は、犯人ではないか?と疑われる3人の男に焦点を当て、それぞれの暮らしぶりを群像劇風に描いていくんですが、それがミステリ味を軽減させてる、というか、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の初期一連作のようでもあって。
悪人(2010)もそうでしたけどね、謎解きの醍醐味やスリルより、犯罪を題材として別に描きたいことがある風なんですね。
なので序盤から割と重厚です。
ありていに言っちゃうとドラマが重い。
なんせいきなり風俗嬢とその父親の親子ドラマですからね。
続いて、ゲイがパートナーとつながりを深め合っていく様子を描いた恋物語ですし。
3本目なんて沖縄で米兵と女子高生ですよ、みなまで言わすな、詳しくは書かねえ、って話だ。
もうね、視聴1時間ぐらいで恐ろしく体力もっていかれます。
お前の映画しんどいねん!李相日!と。
また役者がそろいもそろって上手くてねえ。
世界の渡辺は言わずもがな、娘役を演じた宮崎あおいはあまりに薄幸な御面相すぎて最初、宮崎とわからなかったほど。
松山ケンイチは普通に役柄に憑依してるわ、綾野剛は本人とは思えぬほどゲイ役がはまってるわ、広瀬すずは体当たりすぎて見てるのが辛くなるほどだわで、気がつきゃすっかり前のめり。
しんどいのに迫真過ぎて目が離せない、というパラドックス。
またねえ、じっくりとね、舐めるような丁寧さで監督は登場人物の心の機微を追っていくんですよ。
ああ、もう嫌、と思ったって途中でやめられん、って話だ。
なんなんでしょうね、この妙な中毒性は。
恐ろしく水準が高いのは間違いないと思うんですが、合わせてその磁力が半端ない、というか。
3つのドラマの落としどころも、それぞれが単独で一本の映画にできるんじゃないか、ってなほど劇的で。
真犯人が誰だったかとか、もう、吹き飛ぶ勢いで驚きの顛末だったりしますから。
実際、殺人に至った動機とか割とサラっと流されてたりしますし(えっ、そこ、掘り下げないの?みたいな)。
描かれてるのは『人を信じることの難しさ』と『疑心を抱く気持ちの浅ましさ』。
そこに答えはないんですよね、信じりゃいい、ないしは、まず疑えばいいってわけでもない。
結局我々は、きわどいバランスの上で、手さぐりに生きていくしかないんだ、って思ったりしました。
もう文学やんかこれ、って。
悪人のページでも同じこと書いた気がするけど。
ジェイソン・ステイサムのアクション映画見た後と比べて10倍は疲れましたね、マジで。
監督、もう少し緩和があってもいいんだよ、と思ったりもしますが、これが作風なんでしょうねえ。
ぐいぐい惹きつけられる凄みを感じたことは確か。
面白い、というより、なんかすごいもの見た、って感じですかね。
けど二回は見れんな、正直なところ。
ねじレート 90/100

