2010 日本
監督 李相日
脚本 李相日、吉田修一

真正面から切なくも不器用な恋を描いた大作
孤独に生きてきた二人の、刹那の恋を描いた人間ドラマ。
で、なんで『刹那』なのか?というと、妻夫木聡演じる祐一が犯罪者で、警察に追われているから。
物語設定にだけ着目するならボニー&クライドみたいなんですけど、そこは日本なんであんな風に派手な逃避行を見せつけるはずもなく。
いっそのこと先達に倣って目的地のない道行きを選択してくれたほうがこっちもまだ気楽に見れたかもしれないんですが、生い立ちのせいもあってか、二人とも変に真面目で。
選択のすべてが、いつ自首するか、のチキンレースでしかなく。
最終的に、明日がないことを知りながら、思い出の燈台に二人して籠城することを選ぶんですよね。
はっきり言って、見てて息苦しいです。
どう考えたってどうにもならない。
けれど、やっと心を許せる相手に出会えた二人は離れたくない。
もうね、ものすごく丁寧に描かれてるんですよ、祐一のこれまでと、深津絵里演じる光代のこれまでが。
長い間孤独にさいなまれてきた二人が、何に傷ついて、何に惹かれあったのか、痛いほど伝わる内容になってる。
私はもうオッサンなんで、そりゃ障害があった方が恋は燃え上がるよな、などと穿った見方をしがちだったりするんですが、そんなオッサンのシニカルな目線すら吹き飛ばすぐらい物語が濃密かつ、二人の演技が秀逸で。
ああ、もう、何とかならんのかあ、と途中から身をよじる有様。
頼むから警察に囲まれて最後は自死とかやめて~、とらしからぬ懇願をしてみたり(誰に?)。
正直、純愛とかくそくらえ、と思ってたりする私だったりはするんですけど、これを純愛と呼ばずしてなんという?と途中から思ったりしましたね。
で、この作品が凄かったのは終盤に、予想外な燈台蜜月生活の顛末を用意したこと。
おいちょっと待て!何やってんの祐一!落ち着け!と思わず前のめりに。
色んな解釈ができると思うんです。
もしこれが優しさから生まれた苦渋の決断だとするなら、あまりにも切なすぎて。
とりあえず、私の安直な予想をすべて裏切ってきたことは間違いない。
またラストシーンが意味深で。
本当の悪人は誰だったのか?そもそも悪人はいたのか?それを視聴者に問いかける形になってるんですね。
いやもう、純文学かよ、って。
いまどきここまで真正面から生き方を問う作品も珍しいと思いますね。
樹木希林や榎本明といった名バイプレーヤーが演者に名を連ねてるのも魅力かと思います。
個性派二人が演じるにはごく常識的なキャラの役回りで、なんでこの二人が抜擢?と思う部分もあったが、まあいいか。
それと、樹木希林演じる主人公の祖母が、騙されて健康食品買わされた件はどうなったのか、非常に気になるんだけど、何も語られぬままなのがもやもやだったりはしましたね。
なんでサブエピソードにわざわざこの話を挿入したのか、ちょっとわからなかったり。
榎本明演じる散髪屋の親父のエピソードもふくめて、広義の善悪を問うているのかもしれません。
あと、唯一私がひっかったのは深津絵里。
色んな賞を受賞してるし、すごい演技だと思ったけど、正直ね、光代役にはフィッテングしてないと思った。
華がありすぎるし、美人過ぎるんですよね。
こんな人が紳士服の量販店で販売員やってるわけねえ、と普通につっこめてしまう。
男が放っておくわけないですよ。
これは制作側のキャスティングミスだと思いますね。
そんなこと言ってるのはきっと私だけなんでしょうけど。
どうあれ、おそろしく力強い大作なことは確か。
高い評価も納得でしたね。
ねじレート 90/100

