2015年初出 五十嵐大介
講談社アフタヌーンKC 全5巻

ゲノム編集の末産まれた『限りなく人に近い動物』をビジネスにしようとする、バイオ産業の暗躍を描いたSFアクション。
人の遺伝子を組み替えて動物的な特性を持たせるのではなく、遺伝子操作で限りなく人に近づけた動物を題材にしてるのは、なかなか目の付け所が面白いな、と思いました。
なんせベースがカエルだったりイルカだったりするわけですから。
言語を理解できるだけの知能を持ち、人語を話していてもそもそもが人外であり異種族なわけで。
いや、これほどの異形はないな、と。
埋めようもない断絶が両者にあってしかるべき、で。
そのあたりの『怖さ』『無理解』みたいなものがテーマなのかな、と最初は思ったんですが、作者はあんまり掘り下げようとしてなくてですね。
主に描かれてるのはディザインズを作り出したバイオ企業の内紛劇なんです。
なんか知らんが情報が漏れたり、ヒューマナイズドアニマルが脱走したりで。
ずっとごたごたしてるだけだなあ、ずっとお話が内輪で進行してるなあ、なんて思ってたら、あれよあれよと巻数を重ねてあっという間にもう最終巻。
えっ、普通、この手の物語ってライバル企業とか、過激なナチュラリストとか、反目する敵を設定するもんなんじゃないの?と小首をかしげる。
どうするんだろ、と思いつつ、あんまり盛り上がらないまま最終話、結局、ヒューマナイズド・アニマルにも想定外のケースがあります、で完結。
いやいやいやどうした、五十嵐大介?
お話がどこへも行ってないというか、本編のスピンオフみたいな内容になってるんだけど。
本編どこ行った?って感じ。
うーん、風呂敷を広げられなかったように映りましたね、私の目には。
スタートダッシュは良かったんだけど、コース取りを失敗してるというか。
いや、相変わらずね、はっ、とするようなシーンとか、紙面から音がこぼれ落ちて来るかのような抒情的表現に目を奪われはするんですけど、今回だけはストーリーテリングしくじってる気がしますね。
特にオクダの正体とかね、なんであそこでバラしちゃうの?と私はびっくりした。
クライマックスで「実は・・・」ってやれるレベルで仰天なのに、さらっと流しちゃうんだもんなあ。
お膳立てができなかったのかもしれないですけどね。
本作以降、長編が発表されてない状況を鑑みるに、もうしんどかったのかもしれませんね、この手の作品を連載することが。
私の勝手な邪推ですけどね。
市場が求めてない、という側面もあったのかもしれません。
今の読者にこの手の難解さ、創造性は理解できない気がします。
作者にしか書けない作品だとは思いますが、振り返るなら魔女(2004~)が一番面白かった気がする、というのはあまりに底意地の悪い感想でしょうか。

