2023 アメリカ
監督 ショーン・プライス・ウィリアムズ
脚本 ニック・ピンカートン

いい意味じゃなしに、往年のフェリーニのややこしい映画見てる気になった
終始ダルそうでとかく無関心な女子高生が、修学旅行でテロに巻き込まれ、その後、あちこち一人でさまようお話。
「不思議の国のリリアン」ってのは日本でつけられた邦題だと思うんですけど、おそらく制作側も不思議の国のアリスを意識してる部分はあったと思います。
アリスほど自由奔放にイマジネーション豊かなわけではないですが、めぐるましくいろんな人たちに出会って、いろんな経験を積み重ねていく物語構成は同じ。
ただ、本作の場合、これ、現実ととらえるべきなのか、ファンタジーとして解釈するべきなのか、ちょっとあいまいなんですよね。
常識的に考えて、こうも次々といろんな人物の元を、何も持たない女子高生が渡り歩くことができるとは思えないし、作中の時間経過がちょっとおかしいな、と思える点があって。
虚々実々と解釈するのが正解っぽいですが、最大の問題は現実だろうが虚構だろうが別にどっちでも構わなくね?と言いたくなる面白味のない作劇にあって。
調べてみたところ、監督はコメディのつもりで撮ったらしいんですが、ネタがニッチすぎるのか、それとも私が日本人であるがゆえか、もう本当に1ミリも笑えなくてですね。
シチュエーションは変なんですけどね、それぞれのエピソードにオチもなければくすぐりもなく、ただ女子高生が周りを振り回してるだけでほぼ終わってるんですね。
やばいぐらいに何も汲み取れなくて。
どうやら政治的に偏った思想を持った人たちを次々と女子高生にぶつけてるみたいなんですけど、アメリカのローカルな思想なんてマジわからんし、しらないわけで。
トム・クルーズのサイエントロジーですらよくわからんのに、それよりカルトって、正直興味ないし勝手にやってくれ、って話でね。
わからないなりの印象だけで話をするなら、①アナーキストだかネオナチだかよくわからんパンクス→②自分がエロくないことをひたすら立証しようとする大学教授→③なんかにかぶれてる二人組映像作家→④テント生活を送るゲイ集団?の順番で主人公は転々とするんですが、どこに誰といてもどこにも着地しないばかりか、投げっぱなしで次、なんですよね。
もうね、だからどうした、としか言いようがない。
結局最後まで見ても、女子高生がこの世で最強ってこと?ティーンが大好きなんです僕、って訴えてるわけ?みたいな感想しか出てこなくて。
私の読解力、観察眼が低スペックすぎるのかもしれないですけど、好意的に解釈したところで「あなたたちが主義主張してることなんて女子高生ごときに軽くたしなめられる程度のものなんですよ」みたいな達観を描いてるのかな、程度。
うーん、この映画、アメリカ人にしかわからんのじゃないか、という気がしますね。
少なくとも私は無理。
いっそのこともっと大胆に非現実なんかも織り交ぜてくれりゃ色々想像することもできたか、と思うんですが、現状、オフビートに人間に密着、って感じなんで。
だめだ、今回評価できんな。
ま、突出した映像センスや技巧があるわけでもないんで、考察や深堀りが好きな人たちだけで楽しまれたら良いんじゃないかと。
多分、作り手も間口の広さとか考えてないでしょうし。
ねじレート 65/100(シナリオを加味しない点数)

