2024 フィンランド
監督、脚本 イサ・ユシラ

思ってたより見応えはあったが、主人公を決めておきながら群像劇になってるのがちょっと。
会員制クラブのセキュリティだと思って勤めだしたら、初日から拳銃ぶっ放して殴りこんでくるやつがいて、命の危機に直面する元囚人(主人公)の血まみれバイオレンス。
お話の進め方というか、指向性としては初期のタランティーノに似てる気がします。
悪人だらけで、あれこれ裏切りや、隠された真相なんかもあって。
ただ主人公のおかれた立場がね、ジョン・マクレーン(ダイ・ハード:1988)っぽいというか、彼の巻き込まれ型のついてなさに似てるんで、見てて期待するのは「いかにして主人公は単独でこの危機を脱するのか?」だと思うんですよね。
力押しだけじゃどうにもならない局面において、知恵と工夫で切り抜けるとか、あからさまにしてこなかった意外な特技がものをいう、とか。
じゃないと「勤務初日からひどい目に合うついてない新人セキュリティ」という設定が生きてこない。
で、この作品、そこにあんまり注力してなくて。
なんとなく運だけで切り抜けてるようにもとれる描き方なんですよね。
多分、多彩なキャラクターを描き分けることと、アクションの演出に気を取られすぎたんだと思います。
主人公が主人公として目立ってないんですよね。
どっちかというと会員制クラブの経営者兄弟や、クラブに襲撃かけてきた女の方がキャラが立ってたりする。
これはいただけない。
シナリオは決して悪くないんです。
会員制クラブの非合法な実態が不透明過ぎてモヤモヤする部分があったりもするんですが、アクション映画なりにちゃんとドラマがあるし、銃撃、格闘シーンも思いのほか本格的。
それゆえ主人公の没個性がなんとも残念で。
これ、上手にやれば、新時代の才能みたいな感じで評価されることもやぶさかではなかったと思うんですが、終わってみれば、結局誰の物語だったんだ?首をかしげる有様だったりするんで、どうしても消化不良な印象は残る。
物語をコントロールしきれなかった、ってなところでしょうか。
あと、登場人物たちがやたらしぶといのと、スプラッター映画並みにゴアな描写がたまにあるのがちょっと過剰かな、と。
ま、観客サービスのつもりなのかもしれないですけどね。
フィンランド映画というと、最近ではSISU シス 不死身の男(2023)が記憶に新しいですが、この手の不死身系アクション?が好きなお国柄なんですかね?わかんないけど。
悪くはないです。
最後まで退屈はしない、とだけ。
余談ですが、妙にざらついた映像と、ちょくちょくソフトフォーカスなのはどういう意図?
ねじレート 68/100

