YEAR 10/イヤー・テン

2022 イギリス
監督、脚本 ベン・グッガー

終わりなき冬の到来によって文明が崩壊した世界に生き抜く親子と、共に暮す彼女?を描いたサバイバルアクション。

えー、わかりやすく言うなら(逆に、複雑な説明を必要とするわけでもないけど)北斗の拳です。

あの漫画の世界観、そのまま。

さすがに北斗神拳や南斗六聖拳はでてこないけど、暴力が人々を支配する構図は同じ。

とはいえマッドマックス怒りのデス・ロード(2015)みたいに変なマスクのボス中心で暴徒が組織化されてるわけじゃない。

小集団が小競り合いを繰り返してる感じ。

で、北斗の拳やマッドマックスと違うのは、カニバリズムが常套化していること。

下手に見知らぬ人間と遭遇しようものなら、命の危険どころか、美味しくいただかれてしまうわけですね。

文明が崩壊して10年後、という設定ですんでもう少し社会や共同体が再構築されててもおかしくないんじゃないか?と私は思うんですが、どうやら監督はひたすら終末へと突き進む人類の姿を描きたかったみたいで。

食物連鎖の頂点に君臨するのが山犬の集団、という身も蓋もない哀れな人々の姿を見せつけられたりする。

物語は偶然遭遇した5人ほどの集団に父を殺され、ぺろりといだだかれてしまった主人公の、その後を追う形で進行していくんですが、これがねえ、さほどエキサイティングでもないってのが悩ましいところで。

壮絶な復讐劇となるのか?と思いきや、主人公、徒手空拳な上、腕に覚えもないものだから「とりあえず奪われた恋人の薬だけでも返してもらおう」と、遠巻きに集団の拠点近くで身を潜めるばかり。

なにか知恵が回るわけでも、機転が利くわけでもなく、ひたすらタイミングを伺う感じ。

なんだか経験値の足りないRPGの主人公を見てるかのようでね。

勝てる算段がないのはわかってるだけに、観客側としちゃあ、なにを楽しめばいいのか?って感じでねえ。

出来が悪いなら出来が悪いなりに、簡単に真似できないと思えるレベルの地道な努力や根性を発揮するとか、なにかに特化してくれないと、ただ運任せな兄ちゃんを描写されてもなにも共感できなくて。

それが監督のリアリズムだったのかもしれませんが、北斗の拳もどきの陳腐な世界観でリアリズム追求されても困るわけでね。

しかしまあ、ほんと終末世界というかディストピアが好きだな、みんな。

多分、弱肉強食の無法なサバイバルをやりたかっただけなんだろうな。

本作何故か一切のセリフがないんですけど、それも含めて全部が貧相、って感じですかね。

創造性に乏しいし、意外性ゼロだし、物語の文脈に魅力がない。

本作、元々短編作品だったらしいんですが、変にいじらずそのままのほうが良かったんじゃないか・・と言う気がしますね。

内容の薄さを鑑みるなら、ね。

こういうのを成功させるには、ありきたりで何が悪いと開き直って悪ふざけするぐらいの遊びがないとダメだと私は思うんだけど、多分監督はそんな事考えてもいないだろうな。

来週にはもう忘れてる気がする。

結局、カニバリズムをクローズアップ出来なかった時点で失敗だったんでしょうね。

ねじレート 51/100

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