2023年初出 武田登竜門
双葉社アクションコミックス 1~3巻(以降続巻)

国々を領主と呼ばれる貴族が支配する世界を背景に、体を失った王族の箱入り王子とドガと呼ばれる便利屋の女の「海」を目指す旅を描いたアクションファンタジー。
しかしまあつくづく武田登竜門はロードムービー風の物語が好きなんだなあ、と。
世界や設定こそ違えど、やってることは商業デビュー作であるBADDUCKSにどこか似ていて。
殺し屋もどきの追手がかかるスリリングな展開も印象を近くするように思います。
前作と違うのは主人公であるドガが丸顔でぽっちゃり系の怪力女であることと、同道の道連れが機械仕掛けの役立たずであることぐらいか。
それにしても作者と言うか編集部は勇気あると思う。
サンドウィッチマンの伊達みきおが女装したみたいなキャラ(そこまで濃くねえか、すまん)をヒロイン?に据え置くというのだから。
それって、一部特定層の男性読者をはなから相手にしてないことになるわけで。
普通はサブキャラですよ、ドガみたいな怪力女って。
その気になればそこいらの漫画家が束になってもかなわぬ絶世の美女を描ける人なのに、あえて伊達みきおだもんなあ。
よほど内容に自信がある、ということなんだろうと思うんですが、それがねえ、残念ながら「滅茶苦茶面白い」ってほどでもなく。
どうやら王子よりもドガ自身に大きな秘密が隠されてそうなんですが、怪力女子プロレスラーの出生の謎とか、別にそれほど興味をそそられんわけですよ。
物語世界や筋立ては決して悪くないんですけどね、どうにもメインのキャラ立てが冴えないように思います。
男性読者に媚びない潔さは評価したい、と思いますが、それが魅力的なキャラ創造に繋がらなければ意味ないんであって。
旅の道行きに、もう一人登場人物が必要だった気がしますね。
あんまり頭の良くない怪力女と、知識はあるが世間知らずの王子の二人だけではあまりに心許ない。
あと、以前に比べて作画が簡略化されているのが気になりましたね。
商業連載をつつがなく続けるための判断なのかもしれませんが、あと一歩、そばに来ての美麗で描き込みの細かい作画を知ってる身からすればなんか拍子抜けでしたね。
今現在(2025)も連載は続いてるみたいなんで、そこそこ人気はある、ということなんでしょうけど、私はもういいかな。
次に期待。