2018年初出 森泉岳土
エンターブレインビームコミックス

独自路線を行く孤高の漫画家、森泉岳土が初めて挑むSFとの触れ込みでしたが、うーん。
これはねえ、どうなんでしょ。
独特の作画が他にない漫画空間を産んでいることは間違いないと思うんですが、プロット自体が貧相、と言ってしまってはどこかから怒られるか。
ま、簡単に言っちゃうならディストピアものなわけですよ。
全世界が汚染されて、シェルターにアンドロイドと主人公だけが残る、という筋立てなんですけど、はっきりって連作するほどの題材じゃないです。
SF好きならわかると思うんですけど、こんなの手塚治虫の時代からさんざん擦られ続けてきた設定であって。
思い出すのも面倒になるほど色んな漫画家がサブエピソードで使いまわしてきたストーリーだったりするわけですよ。
いくら海外の小説家の想像力を刺激する文章をモノローグ風に散りばめたとしてもね、ありきたりなのはどうにも隠せないわけで。
ああ、この人はSF小説とかSF漫画とかあんまり読んでないんだな、と思いましたね。
あと、背景の書き込みが作風もあってスッカスカなんですが、SFの場合、ガジェットも大事だったりするんで。
心象風景みたいなのでごまかしが効かない部分はどうしたってでてくる。
この一冊で表現してることを、たったの一話で伝えてるのがウスズミの果て(2022~)だな、と思ったりしました。
どうしてもこれをやりたかったのなら岩宗治生のように短編にすべきだった、と思います。
失敗作でしょうね。
森泉岳土のファンにしか訴えかけない一作。