2018年初出 武田登竜門
双葉社webアクションコミックス 全4巻

人と人以外の人種が共に暮らす世界で、縁もゆかりも無い3人の逃避行を描いたクライムアクション。
男は組織に臓器を入れ替えられた人造人間、女は謎の少数種族で200年以上生きる娼婦、そこに同道するのは市長の息子の隠し子と思われる赤ちゃん、さて持たざる3人は、非合法な犯罪組織の追手をかわして安住の地を見つけられるのか?ってなストーリーなんですけど、1巻を読んだ時点では「やばい、めちゃくちゃ好きかも」とかなり興奮したのは事実。
男と女は好きあってるわけじゃなくて、単に利害関係が一致したから一緒に逃げてるだけで、赤ちゃんに至っては完全に巻き添え、なのに傍目には家族にしか見えない、ってのがなんともそそられる設定でね。
いうなれば疑似家族が危地をくぐり抜けていくことで絆を紡いでいく物語なんですよね、これって。
あー絶対に作者、この手の洋画が好きだわ、と確信(しらんけど)。
やりたいことは痛いほどわかる。
それぞれに問題を抱えてる設定も秀逸でね。
男は内臓いじられてるせいもあって、派手に立ち回ると一定時間動けなくなるし、女は逃亡を恐れた組織から足の腱を切られていて走ることが出来ない、なのに乳飲み子が居る、ってもう無理ゲーじゃねえかよ、って。
これは絶対にギリギリの命のやりとりになるんだろうな、って。
ファンタジーな世界観ながら、やたら現実味が強くて、裏社会に生きる人間の悲哀に焦点があてられてるのもいい。
やばい、泣いてしまうかもしれん・・・と覚悟して読み進めていったんですが・・・・・・ん?
・・・・あれ?なんか違うぞ、と。
いや、それなりのスリルはあったんですけどね、ひと山超えちゃったら物語が急に落ち着いちゃって。
えっ、もう追いこまないわけ?この3人を?みたいな。
例えばね、乳飲み子のせいで死にかけたとか、腕の一本や二本切り落とされたとか、女が触覚を奪われて平衡感覚を失ったとか、さらなる悪夢が待ち受けてるんだろうな、と勝手に思い込んでたんですけど、子供はいつの間にか苦労なく大きくなってるし、男と女は静かに山暮らしだし、で。
なんで潜伏犯の平穏な日常もお楽しみください、みたいになってるの?って。
急にスピード感がなくなっちゃったんですよね。
あと、セリフ回しがあんまりうまくないのも気になった。
この手の物語って、肝心な場面で何を言うかって、ものすごく大事だと思うんですよ。
・・・冴えない。
やばいぐらいに、冴えない。
ま、一応終盤でもうひと盛り上がりはあります。
死を賭した最後の大活劇は、なるほどそうきたか、と思えるものでしたし、その顛末も悪くなかった。
でもね、やっぱりこれは優しすぎるな、と私は思うんですよね。
みんな幸せにしてあげたいのはわかる、私も一読者として幸せになってほしい、けどそれをしたたかに裏切るのがプロの創話だと思うんです。
ここまでハッピーエンドだとね、せっかくの現実味も急に胡散臭くなってくる。
うーん、序盤のテンションを最後まで維持できなかったというか、お話づくりの未熟さが途中で露呈してしまった印象ですね。
でまあ、あれこれ調べてみたら、元々は個人出版だった漫画を双葉社が単行本化したんだとか。
あー、そういうことだったのかー。
あまり辛辣に評するのも酷な話かもしれません。
画力も技術も高いんで、ついつい口うるさくなってしまう、ってことで勘弁。
次作に期待、ですかね。
将来的にものすごい傑作をものにしそうな気配は濃厚かと。