1997年初出 カネコアツシ
エンターブレインビームコミックス 全6巻

この漫画のことを知らない人のために、わかりやすく内容を要約して書くこと自体がなんか野暮な気がする一作。
ま、至極感覚的に伝えるなら、タランティーノのキル・ビル(2003)に登場するユマ・サーマン演じた女殺し屋が、5歳児男子を連れて「約束の場所」まで、敵を血祭りにあげながら旅するロードムービーみたいな感じ、ですかね。
ちなみにユマ・サーマン本人をイメージすると、いささかズレがあって、主人公であるBAMBIの年齢はせいぜい女子高生?ぐらい。
女子高生なんだけど、無敵。
百戦錬磨の殺し屋どもをバッタバッタと返り討ちにしていくんですね。
時代とか舞台とか、特に作り込まれてなくて、どことなく60年代~70年代のアメリカっぽい(看板とか日本語だけど)。
拳銃ぶっ放しまくるBAMBIに官憲の手が全く延びてこないあたり、無法がまかり通った西部開拓時代をイメージしてるのかも(なぜか終盤で突然警察が動きだすが)。
作者本人も言及してますが「色々好きなものをぶち込んだ」らしくて、一読してああ、これはエルヴィスのことだな、とか、悪魔のいけにえじゃん、とか、グロリアとか、映画好きサブカル好きが思わずほくそ笑む筋立てがたくさんあって。
好意的に書くなら「おもちゃ箱のようで楽しい」。
で、まあ、その反面、意地悪な言い方かもしれませんが、キャラクターに頼って遊んでるだけだな、と思ったりする部分もあって。
勢いはあるんですけどね、個人的にはBAMBIのキャラがね、なんだか血が通ってないような気がして。
他のサブキャラはみんな魅力的なんですけど、BAMBIだけがひどく空洞なように思えて。
制作段階であらかじめ箇条書きにした特徴に従って、機械的に動かされてるだけに見えたんですね、私には。
たぶんそれを補完したのがBAMBi 零 alternativeなんでしょうけど、私は未読。
えー、本編でひっかかってるのに外伝に手を出すはずもなく。
一応ね、それなりの着地点は設けられてます、おもちゃ箱とは言え。
なるほど、神殺しだったのか、と少し驚かされたりもして。
ただそれもBAMBIというキャラに魅力を感じてなければ楽しめないわけで。
作者の出世作といっていい作品ですんで、なんだかピンとこないとか、私ぐらいのものなんでしょうけど、SOILを先に読んじゃった身としてはどこか拍子抜けだったんですよね、ただブルータルなだけなように思えて。
今のカネコアツシにもう一度描き直してほしい作品ですね、BAMBIは。
多分全く違うものになると思うんですけど、私はそっちが読みたい。
ラジカルなパンクロックじゃなくて、ヘヴィネスなプログレッシヴ・ロックが好きなんだよ私は。
まあその、フランスを中心に世界的に人気を博した漫画ですんで、私の書くことなんざ無視していいと思います。
中にはこういう意見もある、程度の認識で明日には忘れてやっておくんなさい。