2024 日本
監督、脚本 黒沢清

黒沢ほどのベテランがこんな映画撮るとか、ちょっと理解が追いつかない
転売で一儲けを目論む、冴えない工員を襲った悪意を描いたサイコサスペンス。
うーん、なんなんですかね、この映画?
黒沢清は昔から好きでずっと追っかけてきましたけど、いやさすがにね、今回ばかりはファンと言えども「どうなんだこれ?」って感じでしたね。
多分、みんな言ってるんでしょうけど、主人公である吉井が襲われる理由がね、よくわかんないんですよね。
転売屋を続けてきたことで不特定多数から恨みを買っていることはわかる。
だからといって、過去に恨みを買った連中が集結して団体で命を狙ってくるか?って話で。
まず第一に、吉井の命を奪うリスクの大きさが、行為に見合わないわけで。
大金が手に入るでなし、外国へ逃げる算段があるわけじゃなし。
第二に、自分の命を賭して銃撃戦やらかすほどの強い感情が、襲撃してきた連中にあるとは到底思えなくて。
そこはさりげなく劇中でフォローされてますけどね、襲ってきた集団の内の1人が、妻と子を殺して逃走中とか(ヤケクソってことだね)。
ま、完全に後付けですよね。
で、それ以前の問題としてですね、誰か旗振りが居ないことには、吉井と関係があるってだけで、まるで縁のない男たちがネットを頼りに集まれるはずもなくてね。
偶然が過ぎるんですよ、メンバーの顔ぶれが。
口が悪いのを承知でいうと、途中からデタラメなんですよね、この映画。
整合性も必然性もクソもない、ただただ悪意だけが増幅して吉井に向かってくる、という。
なにかに集団感染でもしたのか?としか思えない悪夢の行動様式は、黒沢清の出世作CURE(1997)にも似て、得体のしれない狂気に支配されており、ひどく禍々しいんですが、これが腑に落ちる人って恐ろしく少ない気がしますね。
また、助手の佐野が意味不明でね。
彼が吉井を助けようとする動機が全く見えてこない上、裏社会とつながりがありそうな怪しい人物がなんで吉井のとこでバイトやってんの?って話で。
そういう意味じゃ吉井の彼女もわけがわからんな。
真面目に彼女のキャラを構築する気もなけりゃ、ちゃんと機能させようとすらしてない気がする。
なんだか新進気鋭の意欲的な若い新人監督が、デビュー前に撮ってそうな映画だなあ、って思いました。
申し訳ないけどこれ、わかってるのは黒沢だけ、と言われても仕方がないと思う。
ある種の実験映画、と言っても良いんじゃないでしょうかね。
しかしスパイの妻(2020)の次がこれかあ・・・(蛇の道はセルフリメイクだし)。
どうしたんだ黒沢、メジャーでこんなの撮っちゃって、干されやしないかだけが心配だよ、あたしゃ。
ねじレート 62/100