2024 アメリカ
監督 J・C・チャンダー
脚本 リチャード・ウェンク、アート・マーカム、マット・ホロウェイ

多くの人から惜しまれながらの幕引き、とはならなかったようで
今のところソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの最終作ではないか、と言われている一作。
ソニーは公式に「ユニバースを終わらせる」とコメントしてないようですが、ま、おそらく一区切りでしょうね。
ヴェノム(2018)以外はさっぱり稼げてないですし、このシリーズ。
本作なんて興行収入6151万ドルですからね。
制作費(1億1千万ドル)の半分も回収できてない、という。
しかしこの映画がモービウス(2022)以下の売上、ってのには驚きだなあ。
私的には、数あるアメコミ映画の中でもトップクラスでクソなのがモービウスなんですけど、あれより評価されてないとは・・・。
もう内容云々じゃないのかもしれないですね、単純に食傷なんだろうな、きっと。
ま、今どきね、ライオンの血が混ざったから百獣の王の力を得た(クレイブンのこと)、とか真剣にやってる段階で救いようがないのは確かですし。
原作に忠実なのも時と場合による、って話でね。
野生動物の血とか、まずは感染症の心配だから。
それぐらいはもうみんな知ってるからさ、これだけネットが発達してりゃ。
先祖伝来の謎の薬飲んでる場合じゃないから、クレイブン、抗生物質処方してもらってこいって、いや、マジで。
さらには、つい昨日まで、圧の強い親父の庇護下にあったぼっちゃんが、たった数年で世界を敵に回すほどの暗殺者になってる(これまたクレイブンのことなんだけどね)展開も疑問でしたし。
なんかね、びっくりするぐらい殺人への禁忌がないんですよ、クレイブン。
もともとサイコパスな資質があったの?と考えるほか、この変貌ぶりに納得の行く答えが見つからない。
そのあたりを説得力たっぷりに描けないなら、思春期のエピソードをあえて挿入するべきではなかったと思いますね。
クレイブンの過去は簡単な回想シーンで充分だった。
その方がストーリー進行のふらつきを抑えられた気がするんですよね。
いい感じに物語をスリム化、ブラッシュアップできたというか。
ダメというわけじゃないんですけど、この内容で2時間超えはちょっと長すぎるかな、と。
あ、ド派手なアクションシーンは悪くなかったです。
もちろん「ありえない」動きのオンパレードなんですけど、いい意味で物理法則無視しすぎずに抑制が効いてた。
出来ることの限界が見える動作設計なんですね。
これは賢いと思いましたね。
あと、個人的にはクレイブン、メイクするなり変装するなりしてほしかった。
素顔で刑務所にて大暴れ、ってもうバカなの?って知能を疑うレベルだと思いますし。
余計な敵を増やすというか、下手すりゃ国家権力を敵に回す羽目になるのは火を見るよりも明らか。
結局、現実味に乏しい、ということになるのかな、クレイブン。
映画自体の出来は、ひどく低調なわけでもないですしね、ミステリ風の種明かしが待ち受けるオチも悪くなかったですし。
どうあれ、1960年代に連載されていたコミックのヴィランを21世紀に蘇らせる上で、現代的考察ができないのなら、何作シリーズを重ねたところで結果は同じ、ということになってしまうのかな。
後世、ソニーの黒歴史扱いされるんでしょうか、このシリーズ。
その前に映画産業自体がひどく衰退しないことを祈らんばかりの今日このごろでございます。
ねじレート 60/100