2023 アメリカ
監督、脚本 ニック・カサベテス

じっくりと丁寧な作劇が長所でもあり、短所でもある
ボストン・テランの同名ベストセラー小説を映画化した作品。
監督は名匠と名高いニック・カサベテスですが、お恥ずかしい話ながらニックの監督作を私は一作も見たことがなくて。
なので何がどう名匠なのか、さっぱりわからんわけです。
お父さんであるジョン・カサベテスならよく知ってて、作風も把握してるんだけど、さて息子はいかなるものか?と。
あー、すでに評価が固まってるベテラン監督に対しての物言いではないな、すまん、監督のファンの皆様方。
とりあえず最後まで見た限りではね、お父さんの影響を色濃く受けてるな、と思いました。
あの時代のインディーズな空気をどこか纏っている、というかね。
ストーリーの進行よりも、登場人物の内面をじっくり掘り下げようとする演出がこの手の映画っぽくなくて。
私は原作読んでないんで物語の温度みたいなものはわからないんですが、カルト集団に娘を誘拐された親父の決死な奪還劇とは思えぬ落ち着いた作劇でね。
皮肉めいた言い方になるやもしれませんが、正直、あんまりテンポが良くない。
これ、もしリーアム・ニーソン主演だったらオープニングから30分以内で敵本拠地の目星をつけて早々に襲撃の計画練ってる、って話だ。
つまるところ、スリリングじゃないんですね。
どこか主人公親父であるボブと、同行者ケースのロードムービーみたいな色調もあって。
さらに言うならミステリ的醍醐味がゼロなんですよ、この映画、原作は2002年度のこのミス!で1位を獲得してると言うのに。
改変、脚色があったのかもしれないですけどね、それがね、映画化に際して原作をより素晴らしく上書きしたとはどうしても思えなくて。
わかんないですけどね。
作家性が強いのは間違いないですね。
もちろんそれが見事活かされてるシークエンスもあって。
終盤、エンディング間近の惜別のシーンとか、ひた隠しにしていた感情の発露が切なくも絵になっていて、なんだこれどこの文芸大作か、と思いましたしね。
うーん、何をこの作品に求めるか?で大きく評価が変わりそうな気がしますね。
ちなみに私は、この内容だったらドラゴンタトゥーの女(2011)の続編みたいな扱いで、ルーニー・マーラ出しときゃいいんじゃねえか?と思った。
いやケースのキャラがね、どこかリスベットと被って見えるんですよね。
マイカ・モンローの演技は申し分なかったんで、彼女がリスベット役でもいいけど。
そうなってくると主人公はヴィゴ・モーテンセンだな。
・・・・今、それなら絶対見る、と思った(完全に目移りしてるな、俺)。
まあその、作品自体の質は決して低いわけではないんでね、ドハマリする人も中にはきっとおられることでしょう。
万人にアピールする内容ではない、とだけ。
余談ですがケース(ジャンキー)が劇中で「神も悪魔も概念で、私達が指したがる針」と言ってのけたのにはしびれた。
タイトル「神は銃弾」の意味も深くて、なるほど、と思うぞ。
ねじレート 65/100