1985年初出 小池一夫/井上紀良
スタジオシップ劇画キングシリーズ 全27巻

マンハッタンの犯罪多発地域34管区で警官を務める、スリーピーとダイザブローの活躍を描いたポリスアクション。
日本人が主人公でない(一応、コンビの片割れであるダイザブローは日系人ということになってはいるが、国籍はアメリカ人)上、アメリカが舞台の警察ドラマで、ここまで長く連載が続いた、というのは異例だったのでは、という気がしますね。
ちょっと他に、似た傾向の作品が思い当たらない。
まあ、この頃のヤングジャンプはあんまり良くない意味で「頭を使わなくてもサクサク読めるヤンキー漫画みたいな作品」が主流でしたから、うまく時流に乗った、ということだったのかもしれません。
やってることはいつもの小池劇画です。
マッチョイズムの権化みたいな主人公スリーピーと、ブレーキ役の相棒ダイザブローが型破りな捜査で悪人どもを血祭りにあげていく内容で、古くはダーティハリー(1971)に端を発する「はみ出し刑事の大活劇」でしかないわけですが、そこにエロスと犯罪都市アメリカのダークサイドを色濃く反映させたのが本作と言えるでしょう。
ただまあ、昔から小池劇画を読んでた身からするとですね、びっくりするぐらい普通だな、とは思いましたね。
口さがない言い方をするなら、大きなテーマも、創話のマジックもなにもない。
キャラを大暴れさせて悪人やっつけて、ハイおしまい。
一話完結な昭和の特撮ヒーローものかよ、って。
たまに人気のテコ入れとしか思えない唐突さで、いきなりサブキャラ殺して無理矢理盛り上げるのは「らしいな」と思いましたが、それすらもいつもの説得力がなくてね。
私の中では涙弾(1988~)と同レベルで低調な作品、といった印象。
ひょっとしたら当時の集英社の編集方針も影響してたのかもしれませんね。
ややこしくするな!哲学とかいらないから、エロくてスカッとするものを!みたいな。
余談ですが、当時はこのシリーズが有害図書追放運動のターゲットとなり(他にも目をつけられた作品はたくさんありましたが)集英社版の単行本は19巻で刊行がストップしてます。
20巻から27巻までは小池一夫が自社であるスタジオシップの劇画キングシリーズから発行。
しかし、今更小池一夫に有害図書って・・・。
いやいやデビュー当時からずっとこうだよ、この人は、と当時は思った。
ちなみに20巻以降が電子図書の普及以前は希少扱いされてましたが、最後まで読んだ身として言わせてもらうなら、別に19巻で読むのをやめても正直あんまり問題ないです。
終盤はスリーピーの妻が二人になる、という、これまた小池一夫がよくやるパターンの作劇で収束に向かって行くんで、何ら目新しさがないばかりか、またこれかよ、って感じだったりします。
うーん、どっちかというと私はあんまり好みの作品じゃないかな。