2024年初出 大暮維人
講談社マガジンKC 1~2巻(以降続巻)

「夜」と呼ばれる災厄に襲われるようになった世界で、「夜」を祓う祓魔師の活躍を描いたオカルトアクション。
えー便宜的に祓魔師と書きましたが、劇中では主人公がどういう役割なのか詳しく言及されてません。
「祟り刀」の「巫覡」である仭と、「大英帝国降神師団」の「軍人」ガオがダブル主人公みたいな感じなんですが、何を背景としてどういった力を行使する存在なのかよくわからないので、彼らをなんと呼べばいいのかさっぱりわからず。
「夜」の名で、もののけ姫(1997)の腐れ神みたいなのが時々街を襲ってくるんですけどね(もちろんデザインは違う)、それら災厄を「舞」で撃退するんですよね、二人は。
シンプルにその行為だけを浮き彫りにするなら、バックボーンは神道で、やってることは古来から日本に伝わる魂鎮めのお祓い、祭祀と非常に近い。
この作品、全編を通してとかく煙に巻かれるというか、説明を放棄してる傾向にあって、読者は勝手な想像で不透明な部分を補うしかなくてですね。
これ、SFにおける「想像の余地」とかではなくて、あとあとの矛盾、齟齬を回避するための恣意的な曖昧さのように私は感じるんですね。
作劇の自由度を保ちたいのかもしれませんが、2巻まで読んだ限りでは各キャラクターたちの関係性にシナリオ進行をまかせて、学園モノ風な展開でお茶を濁してるだけのように思えた。
丸裸にしてしまうなら「ハッタリ」と「それっぽさ」を登場人物にまとわせて危機を演出したところで、それが物語の基礎骨格にはなりえないし、ましてや共感することなんて不可能ですよ、ってこと。
なんとなくぼやっと描かれてますけどね、神道ネタ、古代史ネタでいうと、古代戦士ハニワット(2018~)やカムヤライド(2017~)がはからずもほぼ同時期にそれを題材として人気を博してますし、言うなれば二番煎じ、三番煎じなわけですよ。
そう思わせないようにしてるの?と、つい勘ぐってしまうわけで。
やっぱりよろしくないのは、どこから引っ張ってきた題材なのかをはっきりさせず、すべてが分かってるのは作者だけ、な風に振るまってる物語づくりですかね。
恐ろしく画力が高いんで、丸め込まれてしまいそうになりますが、私はこの作品、あんまり好きになれないですね。
やはり、「ふわっと」させておいていいことと、「ふわっと」させておいてはだめなこと、ってあると思うんですよ、創作において。
辛辣に言ってしまうなら、「借り物が多い事実」をおかしな設定や小道具、意外性の筋立てで誤魔化しすぎ。
あと、個人的にひっかかったのは御陵様のキャラなんですけど、これ、シャム双生児をおもちゃにしてる、と言われても否定できないですからね。
作者にその覚悟はあるんだろうか?と思う。
うーん、昨今話題の少年漫画らしいですが、私はあんまり評価できないですね。