オニクジョ

2011年初出 阿部洋一
集英社ウルトラジャンプコミックス

京都を舞台に、山から降りてくる鬼と、その鬼を駆除するオニクジョの活躍を描いたダークファンタジー。

文章で説明するとなんだが禍々しいイメージがあったりもするんですが、なんせ鬼が

コレ ↑ で

オニクジョが

こんな少女 ↑ だったりするんで。

怖いどころか、なんだか別世界の出来事のようだったりもします。

そういう意味では血潜り林檎と金魚鉢男に近い部分もあるかるかもしれない。

世界丸ごと作ってくるのは阿部洋一の得意技ですから。

ただ、今回に限っては、なんだか妙に残酷だったりはする。

山から降りてくる鬼がね、たいした悪さはしないんですよ。

自転車パンクさせたり、コンビニでダベって人間に因縁つけたりと、せいぜいやさぐれた学生レベルのことしかしない。

なのにオニクジョはわずかな悪も見逃さず鬼を問答無用で殺しちゃうんですよね。

いやいや独裁国家の秘密警察かよ、って。

なぜそこまでやるのか?について一切説明してくれないんでね、どこを楽しめばいいのかよくわからなかったり。

最後まで読めば「それもこの世界におけるシステム」と理解できるんですが、腑に落ちるまでが長いんで、どうにも共感しにくい。

さらには、どういう仕組みなのかよくわからない状態でね、オニクジョの少女と主人公宗太の淡い恋模様とか描かれてもですね、大丈夫なのかこいつ?!としか思えんわけですよ。

好きだ惚れた以前に、はっきりさせないといけないことが大量にあるんじゃないか?宗太よ、って。

地雷女以上に地雷だぞ、オニクジョ?と。

危機管理意識が中学生レベルなんですよね、主人公。

読んでて馬鹿なのか?としか思えない。

どうしても恋愛的なものを折り込みたかったのなら、最後に少し匂わせる程度でとどめておくべきだった、と思います。

ちょっと慌ててしまった印象。

ま、物語自体は後日談を経て、納得の終幕を迎えますが、エンディングの示唆する黒い陰謀がストーリー序盤からあちこちで根を張る作劇だったら、また読後感も違っただろうなあ、と思わなくもないです。

題材的にはホラーコメディに仕上げるのが正解だったと思うんですが、作者にその発想はなかったようで。

うーん、ちょっと残念、って感じでしょうか。

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