バスターのバラード

アメリカ 2018
監督、脚本 コーエン兄弟

おそらくコーエン兄弟最後の共作。

全6話からなる西部劇オムニバス、NETFLIXオリジナル。

なんで西部劇で、なんでオムニバスなのかさっぱりわからんのですが(どこかで言及してるのかもしれませんが)もう長い間西部劇の新作って見てない気がするので「今、あえて西部劇で何をやろうとしてるのだろう?」と、逆に興味を持った、というのはありましたね。

なんせコーエン兄弟はトゥルー・グリット(2010)という名作を過去発表してますからね、また西部劇撮る、と言われちゃなんか胸の内がざわざわしてきたりもする。

シリアスにドラマチックなのかな、って。

えー・・・・全然違った。

どっちかというと、コメディ寄りだった。

全部が全部、面白おかしいのか?というとそうでもないんだけど、どこか恣意的に悪ふざけを演出してるような節もあって。

共通するのは、どの物語にも強い死の香りが漂っていること。

シニカルに黒いんですよね。

ブラックユーモアといいたいところなんだけど、ユーモアじゃ片付けられんな、これ、と気が滅入るお話もいくつかあって。

特に第3話「食事券」なんて、顛末に救いがなく、あまりに即物的ですぐに気持ちの切り替えができなかったほど。

最終話「遺骸」なんてどこか本格ホラーのオープニングのようでもありましたし。

なんだろう、バラエティに富んだ内容ながらも、普通に厄災が身の回りにうろうろしてる作劇がなんかエキセントリックでね。

これはなにかに対する皮肉なのかなあ、と思ったりもするんですが、単にドラマツルギーの問題に過ぎないような気もして。

私が印象的だったのは第4話「金の谷」。

一攫千金を目論む山師のじいさんの話で、欲望が交錯する醜い争いを描いてるんですけど、山野や河といった背景映像が素晴らしく美しいんですよね。

調べてみたらコーエン兄弟、初めてのデジタル撮影だとか。

60代後半だというのに、まだ新しい可能性を我々に見せつけてくるのか、と唸りましたね。

で、見終わってみれば、短編集だというのに、なんだか不思議な満腹感。

大人の映画をじっくり堪能した気がしました。

やっぱり台詞回しが圧倒的にうまい、それを再認識。

ただ、コーエン兄弟が苦手、という人にとってはらしさ全開ゆえ、つまらない、という感想を抱く結果となるかもしれません。

地味、とかいう人、居そう。

全然地味じゃないんだけどね、すげえ銃撃戦とかあったりするんで。

もともと監督のファン、ということもあるのかもしれませんが、私は久しぶりに時流とか観客層とか無視した作家性の強い作品を見たように感じました。

ベテランが腕をふるった絶妙な味わいの一品。

変化球といえば変化球で、NETFLIXじゃないと無理なようにも思いますが、私は好きですね、この映画。

ねじレート 88/100

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