新・血潜り林檎と金魚鉢男

2015年初出 阿部洋一
アーススターコミックス 全2巻

掲載雑誌の廃刊という不運に見舞われ中断してましたが、コミックアース・スター誌において電撃復活。

どうなるんだ?とファンをやきもきさせていた一作でしたが、なんとか完結にこぎつけてます。

ただですね、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品という華々しい評価を得た作品の割には人気がふるわなかったらしく、たった2巻で終了。

ま、文化庁メディア芸術祭受賞作品って、悲しいほど話題にならなかったですけどね、毎回毎回。

個人的には文化庁云々とか関係なしに「これは阿部洋一にしか描けない漫画」と注目してたんですが、イマジネーションが奔放すぎて読者がついていけなかったんですかね?ひょっとして?

世界丸ごと再構成してくるからなあ、阿部洋一は。

一定数の読者が「わけわからん」という気持ちもわかんなくはないんですが、漫画界広しといえどもこんな事ができるのは他には高橋葉介ぐらいしかいないと思うんでね、それってすごくないか?と思うわけですよ、私は。

阿部洋一がとんでもないのは、そんなリビルドした奇妙な世界を、その世界なりの法則に従って着地点を見出すなり、収束させてしまうこと。

本作でもその剛腕は見事威力を発揮してます。

よくぞまあ金魚鉢男と血潜り少女スイマーの話をこんな風にまとめたことよな、と。

残虐で幻想的ながら、露悪的に陰惨になることなく、最後にはボーイミーツガールの恋以前を演出するなんて、並の才能じゃない。

ラストシーンにおける予想外な邂逅は、異形をも受け入れんとする切なさが愚かしくも描かれていて、これはもうある種の美だ、と私は思った。

しかもこれ永遠の夏の物語だったりするんですよ。

いや、鳥肌でしたね、正直。

返す返すもじっくり思い残すことなく描かせてあげたかった。

残り2巻でなんとかなるようなスケールじゃないですよ。

バニラスパイダーもすごかったですが、肩を並べる出来、と言っていいのでは、と思います。

もう少し固定ファンがついてもいいと思うんだけどなあ、なんか不遇なままでほんと残念。

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