2023 日本
監督 古賀豪
脚本 吉野弘幸

色々次世代すぎてもうついていけない
鬼太郎が産まれる前の前日譚を描いた劇場長編アニメ。
鬼太郎のTVシリーズ第6期がベースになってるらしいんですが、物語そのものは昔、朝日ソノラマから発売になっていたゲゲゲの鬼太郎1巻の第1話をモデルとしているように思います。
ストーリーの膨らませ方が漫画とはまるで別物ですけどね。
ま、くちさがない言い方をするなら、まるで往年の横溝正史みたいな筋立てで、なぜ鬼太郎で八つ墓村?(犬神家の一族でもなんでもいいけど)って感じではあるんですけどね。
ただ、事件の真相が現実的に帰結するのではなく、呪術的で妖怪変化が絡んでたりするんで、ジャンル的にはオカルトミステリーになるんですかね、これ。
広く話題になったヒット作ですんで、今更私のような老骨があれこれ言ったところで仕方がないとは思うんです、それはわかってるんだけど、個人的にはね、いや、これ鬼太郎じゃねえわ、ってのが本音。
まず最初にひっかかったのは猫娘。

・・・おい、なんじゃこれ、と。
どこの美少女アニメなんだよ、って。

猫娘、っつたらコレだろうがよ、って。
現代的に改変するにしたって程度ってものがあるだろうが、と。
じゃあなにか、ワカメちゃんがいきなりプリキュアみたいなキャラに変わっても、サザエさんは成立するのか?って。
はっきり言ってシンプルに気持ち悪い。
誰のご機嫌伺ってるの?って感じで。

鬼太郎の親父のキャラがコレというのも安直なデザインすぎて辟易。
また、この人の性格がねえ、飄々としているようでどこか熱血漢で。
少年ジャンプかよ、って。
愛と友情のためには我が身を犠牲にすることも厭わない、ってか。
なんで目玉おやじがそんな性格なんだよって。
茶碗風呂にしか興味ないような奴だぞ、あやつは。
そもそも鬼太郎のシリーズってね、誤解されがちですけど勧善懲悪な正義のヒーローものじゃないですからね。
なんか困ってる様子だから、面倒くさいけど成り行き上、手を貸すか、みたいなゆるキャラが鬼太郎だったりする。
人間との関わりを本当はどう考えているのか、よくわからない部分があったり。
本来なら魑魅魍魎の側ですからね。
そのあたりの不可解さ、不安定さが妖怪怪異譚としての怖さの演出に大きく関わっていて。
薄気味悪いのが鬼太郎なんですよね、元々はね。
それをTVアニメの第一シーズン、第二シーズンぐらいまではよくわかってた、と思うんです。
私が鬼太郎のTVアニメシリーズに関心を持たなくなって20年以上が経過してますから、小さな齟齬がどこかで大きく変節した、ってことなんでしょうけど、変節した状態で産み落とされた亜種がおそらくこの映画なんでしょうね。
そりゃついていけなくても仕方ねえわ、と変に納得する部分もあったり。
とりあえず鬼太郎で横溝正史調の作劇はやめてほしかったですね。
そういう人怖系の怖さじゃないんだって、鬼太郎は。
2000年以降のTVアニメ鬼太郎がスタンダードである若い人たちための作品、ですかね。
これが鬼太郎じゃないなら「面白かった!」という気持ちもわからなくはないです。
ま、決して個性的ではないけれど、プロの仕事を全うしてるアニメ作品だな、とは思いました。
私には受け入れがたい、ってだけで。
すまん、面倒くさいジジイで。
ねじレート 62/100