JUNG_E ジョンイ

韓国 2023
監督、脚本 ヨン・サンホ

気候変動により人類が住めなくなった近未来の地球を舞台に、内戦を終結させるべく、最強と呼ばれた女傭兵の複製を作る研究に没頭する人工知能研究所の主任スタッフを描いたSF巨編。

NETFLIXオリジナル。

しかしまあそれにしてもみんな、ディストピアものが好きだなあ、って。

ヨン・サンホは出世作新感染(2016)からしてカタストロフだったから筋金入り、と言えるのかもしれないですけど。

とりあえず世界観そのものは割と陳腐です。

地球を脱出した人類の移住先であるシェルター8、12、13号の反乱で内戦、ってそのまま機動戦士ガンダムじゃねえかよ、って。

ジークジオン!って聞こえてきそう。

好きなもの、影響を受けたものがダダ漏れという微笑ましい状況でしてね。

ま、いいんだけど。

作品の隠れたテーマとなっているのは、人間の記憶ごと複製したアンドロイドは、永遠の命を得た本人と言えるのか?という疑問。

これまで数多の映画で、時にはスルーされ、時には否定され、結局のところ答えが曖昧なままの命題ではありますね。

鍵となるのは意識の連続性だと思うんで、あれこれ悩むまでもなくオリジナルが生きてるうちに複製作る行為自体がもうおかしいんじゃねえの?と思うんですが、そこには言及されないまま(少なくとも主人公はわかってない)。

主人公の女性研究員ソヒョンは、事務的に、死んでしまった傭兵の脳をコピーしたアンドロイドをひたすら作り続けます。

なんで何体も作ってるのか?というと戦闘能力が満足行くものではないから。

その原因を研究中、というわけ。

ストーリーのキモとなるのは、伝説の女傭兵が主人公の実の母親であるという設定。

で、この作品の最大の論題は、親子という設定を良しとするかどうか?にあると思うんですよね。

普通に考えてね、実の親のコピーロボットを次々作ってはぶっ壊していく、なんてまともな神経じゃできない、と思うんですよ。

一皮むけば機械ですけど、外見は母親そのものですしね。

そんなサイコパスも真っ青な行為をルーティンとしてこなしてる主人公って、私の感覚からすれば「壊れてる」としか言いようがない。

で、主人公が壊れてる、と仮定した場合ですよ、終盤のソヒョンの行動に必然性、整合性がなくなってくるんです。

エンディング、ヨン・サンホらしく劇的で、ああ、ソヒョンは母親を呪縛から解き放ってやりたかったのか・・・と胸が熱くなるんですが、それが前半~中盤のソヒョンと同じキャラだとは思えなくてですね。

主人公の内面を上手に描けてないだけかもしれないですけどね。

なんとも悩ましい。

あと私が気になったのは、ソヒョンを演じる女優さんがあまりにも普通のおばちゃんで、物語とミスマッチなように思えたこと。

いや、下手だとかそういうことじゃないんです、近所の煙草屋で時々店番してるようなおばちゃんがね、SFで近未来は違うだろ、って。

女傭兵役のキム・ヒョンジュもなあ、最強って感じじゃないんですよね。

保険の外交員やってました?みたいな感じなんですよね、この人。

この役は絶対スカーレット・ヨハンソンだろ、と私は思ったんですけど、韓国映画に単独で出演とか無理か。

さらには、付随する疑問としてなんでこの映画は韓国人しか出てこないの?ってのもある。

内戦を終結させるため、などとでかいアドバルーンをぶち上げた割には、韓国語話す人しか居ない、ってのは、なんかおかしくねえか?って。

韓国の内戦じゃないんでしょ?って。

予想以上にCGやVFXはお金かかってましたし、涙腺直撃のシーンもいくつかあったんですけどね、不手際というか行き届いてない部分がいくつかあるように感じましたね。

うーん、やっぱりヨン・サンホはアニメの人なのかな、と少し思いました。

フェイク~我は神なり(2013)とかすごかったんですけどね、新感染以降、なんだか冴えないような気が・・・。

余談ですがアイ、ロボット(2004)にそっくりなシークエンスが終盤であるんだけど、これもオマージュってことでOK?

ねじレート 75/100

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