日本 1975
監督 佐藤純彌
脚本 佐藤純彌、小野竜之介

想像してたよりもスリル控えめ、ドラマ濃いめ
80キロ以下になると爆発する特殊な爆弾を仕掛けられた新幹線の、決死の危機回避を描いたサスペンス。
「何があっても停まれない旅客輸送」というと、私の場合スピード(1994)を思い出したりするわけですが、本作をあげつらうまでもなく古くからの鉄板ネタなんでしょうね、きっと。
その対象が新幹線だった、という点に当時は新鮮味があったんでしょう。
なんせ世界最先端の夢の高速鉄道(75年当時はTGVすらまだ走ってなかった)に爆弾ですからね、アイディアの大胆さがスリルに直結したであろうことは想像に固くない。
ただこの作品ね「新幹線の80キロ以上の運行にはあらゆる困難が待ち受けていた・・・」ってな展開でハラハラさせるわけでもなく、前半のレール変更に伴う分岐器のシーン以外は特に何も起こらなかったりします。
そのまま福岡までひた走るだけ。
なんかよくわからんけど時々運転手役の千葉真一がヒス起こしてるだけで、止まれない列車の危機感の演出という意味ではあんまり盛り上がらない。
また、千葉ちゃんがあんまり上手じゃなくてねえ。
ああ、この人はやっぱりアクション俳優だな、と思わせるぎこちなさで。
乗客がパニック起こす描写もちょっと大げさすぎやせんか?と思われる過剰な作劇で。
いくらなんでも乗客全員が全員、頭悪すぎるだろう、みたいな。
誰一人として冷静なやつが居ないんですよね。
妊婦さんをわざわざ乗客として登場させたのもイマイチよくわからない。
妊婦さんの出番を作るなら、爆弾解除に伴う列車停止と同時に子どもが生まれるシナリオじゃないと意味ないと思うんですよね。
要はキャラを使えてない。
おそらく、新幹線の運行を管理する総合指令室と警察、犯人グループとのやり取りを物語の主軸としたかったんでしょうけど、新幹線大爆破と命題したのなら、新幹線内部のドラマにもっと力を入れてほしかったところ。
ま、犯人グループのリーダー役である高倉健は確かに良かったです。
やっぱりこの人は違う、と唸らさられるだけの存在感があった。
指令長役の宇津井健の演技も素晴らしかった。
でもね、国鉄の危機管理を含む、知られざる内幕に興味があるからこの映画を見よう!と思う人って、ほぼ居ないと思うんですよね。
申し訳ないけど「いらん情報」が多すぎるんです。
70年代とはいえ、警察が馬鹿すぎるのも気になった。
もうほんと行き当たりばったりでね、スキあらば発砲して拘束しようとするから。
とても身代金(新幹線乗客の)を扱うデリケートな事件に携わってるプロとは思えない。
あと、なにかというと役者に汗をかかせて緊張感を伝えようとする安っぽい演出も気になった。
今絶対、撮影前に霧吹き使っただろ、みたいな。
犯人側の心情に寄り添ったドラマ作りといい、やるせないエンディングといい、視点を変えて見るなら決して悪い出来ではないんですが、この手の映画に私が求める手に汗にぎる緊迫感は希薄でしたね。
恐怖の報酬(1953)みたいな危なっかしさを期待したのが間違ってたのかもしれないですけど。
役者のお陰でなんとかなった一作、という印象もあり。
ちなみに2025年、運転手役に草彅剛を抜擢して樋口真嗣監督が本作のリメイクをNETFLIXで公開しますが、さて、どんな仕上がりなんでしょうね?
一回、全部リセット出来てたらオリジナルよりこっちのほうがいい、って評価もありうるかも。
ねじレート 70/100