アメリカ 2019
監督 ジョナサン・ヘルパート
脚本 クレイ・ジーター、チャールズ・スパノ、ウィル・バサンタ

地味で朴訥だが、要所はきちんと抑えてる
汚染が進み、人類が居住不可能となった地球で、1人環境の再生を信じて地球に居座り研究を続ける女と、突然現れた気球の男との邂逅を描いた終末SF。
とりあえずオープニングのナレーション、何を言ってるのかイマイチよくわかりません(発電所って、なんのことなんだよ)。
多分これ、邦訳がつたないんだと思うんですが、公開されるまで誰のチェックも入らなかったの?とマジで思う。
こういう不手際って、ネットでしか見れない映画のハードルをさらに高くしてるように思うんですけどね、あんまり再生数が芳しくない作品は放置なんでしょうね、きっと。
ちなみに、映画自体は非常に地味です。
主人公の女は、定期的に木星の衛星であるイオにいる恋人と連絡をとったり、プロキシマ・ケンタウリへのさらなる移住計画を聞きかじったりと、スケールだけはやたら大きいんですが、基本画面に映し出されるのは人が居なくなってうらぶれた街並みと荒野、あとは気球の男だけですし。
二人芝居、と言ってもいいかもしれない。
派手なCGやVFXはほぼありません。
見るからに低予算作品。
で、そんな地味な二人芝居でもってなにを描いているのか、って話なんですけど、いうなれば滅びゆく世界へむけたレクイエムとも言える心理劇だったりするわけです。
父親が高名な研究者で「時間さえかければ地球は自然に再生していく」と高説ぶちかましたのを信じ、地球最後の女として主人公は孤独と戦ってきたわけですが、そんな不退転の決意も気球の男に出会って揺らぎ始めてる自分がいるんですね。
地球を脱出するなら最後のチャンスとなる連絡船の発射が間近に迫ってる。
揺れる女の心情を、切々と描写。
どこかフランス映画っぽい雰囲気もあり。
あー、これはSFが好きで、なおかつ、ヨーロッパの映画に共通するじっくり丁寧な(のんびりした?)進行に免疫がある人じゃないと途中で脱落するだろうなあ・・と思ったり。
いやアメリカ映画なんだけどね、うん。
ただね、脱落しなかった人だけに、それなりのご褒美はあって。
エンディングは予想外に衝撃的です。
それもひとつの選択であることは間違いないんだけど、切なくも確信犯的な行動に「長い間タイミングを伺ってたんだろうな、きっと・・・」と吐息が漏れる。
失われゆく世界に寄り添うしかなかった哀しみを描く秀作だと思います。
人を選ぶ作品だと思いますが、CGまみれで大立ち回りなだけがSFじゃないと思うんで、こういう映画が発表される余白があることは大事だと思いますね。
決して必見でも大傑作でもないですが、どこか記憶に残る一作ではありました。
ねじレート 70/100