2024 日本
監督 白石和彌
脚本 池上純哉

盛り上がんなきゃおかしい内容だが、配役にしっくりこない部分もあり
笠原和夫(日本侠客伝、仁義なき戦い)が残した幻の脚本を映画化した一作。
江戸幕府崩壊後に勃発した戊辰戦争の真っ只中、旧幕府軍につくか、新政府軍につくか、どっちつかずの態度で周囲を苛立たせていた新発田藩の謀略を描いた時代劇。
物語の主筋は新発田藩によって捉えられた犯罪者どもが無罪放免を餌に、砦を守る任につかされる展開を端緒として進んでいくんですが、このお役目自体が実は相当な無茶振りでして。
なんせね、犯罪者集団の内訳が人足に博徒、女郎、坊主、ただ二枚目なだけの色男に辻斬り、ときた。
総勢十一人で戦の経験があるものはゼロ。
藩から剣術に覚えのある藩士が数人遣わされてはいるんですが、15人にも満たない寄せ集め集団で新政府軍の軍勢を砦で食い止めろ、という。
砦は渓谷に囲まれてるんでね、地の利はあります、ありますが、どんなに知恵を絞ったところで勝てる絵図が浮かんでこないわけです(物量と質、両面の問題で)。
あ、死にに行け、と言われてる、と誰の目から見ても明らか。
本人たちも、本音で言えばなんとかなるとは思ってないんです、そこをどう寄せ集め集団が機転や工夫をきかせて乗り越えていくか?が物語の見どころでして。
プロット自体は永井義男の「幕末一撃必殺隊」に似ていたりしますが、アイディアを形にしたのはこちらが先、なんですかね?
どちらにせよ、ポンコツ共が力を合わせて難敵を退ける、ってのは古くからの活劇によく見るパターンであって。
もう、ある程度展開は読めていたりもする。
多分、何人かは死ぬんだろうなあ、大事なのは11人のキャラ立てだけど、そこは白石和彌だから大丈夫だろう、どんなドラマを見せつけてくれるのかなあ、とそれほど大きな期待も不安もなく見進めていったんですけど、いや、普通に面白かったですね、そこはさすがの一言。
わかっていても脇見をさせない、ってのは監督の力量ならでは。
白石監督らしい容赦の無さ、エグさも時代劇という制約の少ない世界にあって存分にふるまわれており。
前作碁盤斬り(2024)よりも舞台設定故か、色々派手だった気がしますね。
ただね、私が幾分気になったのは配役でして。
主役は山田孝之演じる人足なんですけど、41歳が演じるキャラじゃないと思うんですよね、これ。
山田孝之がすごい役者なことは知ってるし、なんならファンだったりもしますが、猪突猛進で頭に血が上りやすい新婚さんの役、ってのは流石に無理があるだろう、と。
どう考えてもこれは20代のキャラクターですよ。
山田孝之じゃあ落ち着きすぎだし、目に力がありすぎ。
あと新発田藩の城代家老を阿部サダヲが演じてるのも気になった。
下手だとは言いませんが、阿部サダヲじゃ童顔すぎる、とシンプルに思った。
本作において、ものすごく重要な役なんですよ、家老役って。
それこそ腹の底がまるで読めない怪人と言ってもいいぐらい色んな顔を持つ人物で。
いや、阿部じゃねえだろ、って。
監督がどう考えてたのかはわかりませんけどね。
ちょっと意外だったのは、物語の結び方。
まさかここまで徹底的に救いがないとは・・・と悄然。
ま、スカッとはしないですね。
手ひどく現実を見せつけられたいやな感触だけがあとに残る感じ。
総ずるなら、それなりにいろんなドラマが内包されていて見応えはあったが、配役の違和感が最後まで気になったのと、ビターなエンディングがどうにも後味悪い、といったところでしょうか。
これ、切腹(1962)の小林正樹や、ビートたけしが撮ってたらどうなっただろう・・・と少し思いました。
あ、そうそう藩士役の仲野太賀は唯一はまってた気がしましたね。
1人、気を吐いてた気がする。
少なくとも千原兄弟の残念な兄や、ナダルと並列に語っちゃいかん、と思いました。
ねじレート 72/100