オーストラリア 2023
監督、脚本 コリン&キャメロン・ケアンズ

そそられる題材選びで舞台設定だったが、最後の最後でド派手にやりすぎ
70年代のナイトショー(TV番組)の最中に起きた怪奇現象を、コマーシャル中も含め撮影していたビデオが発見された、という体で展開するフェイクドキュメンタリー形式のホラー。
こういう映画のことをファウンド・フッテージ形式というらしいんですが、全く知りませんでした。
「撮影者が行方不明などになったため、埋もれていた映像という設定のフィクション作品」ってな意味合いらしいです。
なんだかもうどんどん横文字が増えていくなあ、って。
こういうのって、誰が言い出すんでしょうね?やはり海外の評論家なのかな、まあ、いいか、えっ、知らないのは私だけ?
とりあえずね、題材選びが特徴的だな、とは思いましたね。
70年代のテレビ番組を舞台にしたホラー映画、ってほぼないと思うんですよ。
やっぱりフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)といえばブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999)であり、パラノーマル・アクティビティ(2007)であり、日本で言えばノロイ(2005)あたりだと思うんで、目のつけどころが独特だったことは確か。
また劇中で展開されるテレビ業界の表裏が本当に胡散臭くて。
私は決して海外の深夜テレビ番組事情に詳しいわけじゃないですけど、もうね、逐一納得の無責任さ?であり、いい加減さでね。
当時をよく知らない人ですら信じ込んでしまいそうな空気感、雰囲気の作り込みは見事だと思いましたね。
また、いかにもアナログなビデオテープですよ、ってな画質が物語世界を盛り立てるのに効果的で。
ビデオテープの傷らしきものすら再現するこだわりっぷりには少し笑ってしまいましたね。
半信半疑ながらもオカルトをどこかで畏怖し、ひょっとすると本当に霊や悪魔はいるのかも、と恐れる時代の風潮を巧みにストーリーの下敷きとしているのも上手だと思いました。
大槻教授と矢追純一をふいに思い出したり。
中盤ぐらいまでは実に見応えがあったことは確かですね。
これ、どうなるんだろう、と予断を許さないものがあったのは間違いない。
で、残念ながら、よろしくないのが終盤。
とんでもない怪現象が起こるんですけどね、えー、はっきり言ってやり過ぎ&人が死にすぎ。
本当にこんな事が起こっていたと仮定するなら、もう政府筋の管轄で隠蔽工作しないとやばいレベルですから。
のんびり「当時のビデオが発掘されました!」・・・なんてことは多分ない。
ビデオ自体がおそらく跡形もなく処分されてるから、その筋の役人(工作員)の手で。
なんでもうちょっと控えめに怪異を演出できなかったのかな、って。
ウルトラセブンに登場する敵宇宙人クラスの超常能力を見せつけてたりしますから、ある人物が(古い例えですまん)。
いつこの映画は円谷プロ監修になったんだよ、って。
あとね、この手のTVショーで起こった怪異というと、70年代に朝日放送で放映されていたワイドショー・プラスαが、私の場合記憶に残ってて。
稲川淳二の「生き人形」という怪談でも当時の惨状が語られてますが、司会者の乾宏明がパニックになった、という逸話が有名。
つまり日本の場合、フェイクではなく、現実にテレビ番組で怪奇現象が起こった、という先例があるわけなんですね、真偽の程は定かではないとしても。
それを知ってる身からすりゃ、いくらこの映画がそれらしく作り込んであったとしてもやっぱり現実には及ばんな、という実感を得てしまう。
最後の最後で、派手に血しぶき飛ばして立ち回られてはなおさら。
急に作り物臭くなっちゃうんですよね。
サービス精神が炸裂しちゃったのかも知れないですけど、できればエンドロールまで現実を逸脱しすぎず、それなりの抑制を利かせてほしかった、というのが本音。
惜しい、の一言ですね。
実力ある兄弟(監督)だと思うんで、次回作に期待したいところ、ですかね。
ねじレート 70/100