容疑者Xの献身

2008 日本
監督 西谷弘
脚本 福田靖

フジテレビ月9ドラマの大ヒットシリーズ「探偵ガリレオ」の初映画化作品。

さて、さも周知の事実であるかのように、しゃあしゃあと大ヒットシリーズなどと書いてる私ではあるが、実は探偵ガリレオが当たりまくったことも、社会現象化したことも、今日この日、この瞬間までまるで知らなかった、というのが実状だったりする。

調べてみてびっくりした。

すでに3本も映画化されてるやん!って。

えっ?あなた日本に住んでます?とか、疑われそうですけど、こういう人は私だけではないはずだ、しらんけど(多分)。

いやね、なぜ知らなかったか?というと、答えは簡単で「0年代初頭ぐらいから全くテレビを見なくなった」から。

テレビ見なけりゃテレビドラマも当然見るはずもなく。

ちょうど20年前ぐらいから、空いた時間を映画と読書に全振りしだしたんですよね。

読書は近年の老眼でもうさっぱりだけど、ブログやりだしてからはいくら時間があっても足りない状態で。

テレビと遊んでる暇ないわけですよ、世界中のまだ見ぬ映画にアンテナ張ってると。

それが良い悪いは別として(子供じみて極端で気味悪いとか言うな)、そういう生活を続けているとこのような浦島太郎が出来上がるわけです、いやはや自分でもびっくりだ。

決して臭い飯を食っていたわけではないのだ、皆様方。

ま、東野圭吾があんまり得意じゃないんでね、目に入ってもなんとなくスルーしてた可能性はありますね。

で、今回、小さなきっかけや縁があって、初めて手にとってみたわけなんだけど、あー、こういうのが世間では大ウケしてたのか、と遠い目。

ちょっと思ってたのとは違った、ってのはありました。

なんだろ、あんまり良くない意味で漫画チックというか。

おそらく原作は原作でまた違った味わいなんでしょうけど、いかにもなキャラクター先行型の物語作りがね、ほんとテレビだよな、って感じで。

とりあえずね、暗黙の了解と化してるんでしょうけど、福山雅治演じる物理学教授ですか?あんな人物は現実に存在しないからね。

色々とオーバースペック気味に誇張して描かれてるんでしょうけど、なんで大学教授が警察差し置いて容疑者に会いに行ったり、捜査にくちばし挟んだりしてんだよ、って話で。

物理学の分野で協力する、ってのならわかりますよ(原作はそれっぽいけど)、本作で描かれてるガリレオ=湯川教授は名探偵コナンばりの推理を披露したり、犯人の裏をかいたりしてますからね。

いつから物理学は、金田一耕助なみの観察眼と考察力が必要になったんだよ、って。

また犯人がねー、大学時代の同窓生で天才数学者である、と言う設定がね、更に現実味を希薄にしていて。

いつから数学は、怪人二十面なみの犯罪に対する深い造詣と大胆な実行力が必要に、以下略。

どう考えても殺人事件に縁のなさそうな専門バカ二人がしのぎを削るミステリ、ってのがもう、私は本当にのれなくて

高い教育を受けている人間になにかコンプレックスでもあるのか?っていいたくなるぐらい、ガリレオも犯人も頭抜けて狡知なんですよね、犯罪に関して。

元工作員とか、元刑事とかでもここまで鮮やかに事件を隠匿できない&事実に気づいたりできんわ、って。

ただね、キャラクターが数学者と物理学教授ということをさておくならね、事件のトリックやからくりはよく出来てた、と思います。

ああ、そういうことだったのか!と思わず膝を打ったし。

タイトルにもある「報われないことを承知の上で身を投げ出し、一人の女を救おうとする」献身のドラマも見応え十分だった、と思います。

もう、堤真一の演技が素晴らしくて。

そこは初期設定の違和感とか軽く吹っ飛ぶ勢いで、ひどく心かき乱されましたね。

ぶっちゃけ、エンディングは涙腺決壊しそうになった。

まてまてまてまてダメダメダメ、泣いてはダメ、さんざん文句言っておきながら最後に泣くとかマジで駄目、と辛抱したがな。

結論。

どのキャラクターにも現実味がなかったが、くやしいかな、物語は面白かったし、なんかツボをつかれた、以上。

ちゃんと映画のスケールを意識して撮ってたのも良かったと思いますね。

いや、テレビ畑の演出家が監督だから、もっとちまちましてんのかな、と勝手に思い込んでたのよ、すまん。

でまあ、終わってみれば、この食後に口の中がなんかざらついてるような感じ、っていかにも東野圭吾だな、と思ったりもします。

思ってたよりは良かった、だけどシリーズを見たいとは思わない、ってところでしょうか。

公開から10年以上経ってるヒット作に今頃何を言ってるんだ、って呆れられそうですけど、いや、すまん。

ねじレート 72/100

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