生き残った6人によると

2020年初出 山本和音
エンターブレインハルタコミックス 1~2巻(全7巻)

いわゆる「ゾンビもの」であり、プロットに何ら新鮮味はありません。

「ゾンビもの」は一時期の大流行を経て、メディアを問わず玉石混淆大量生産されましたから、正直ね、まだやるのかよ・・・ってなウンザリ感しか最初はなかった。

巨大なショッピングモールに籠城して生き残る、という展開も、古くは嚆矢たるロメロのゾンビ(1978・映画)そのままだし、それを流用したアイ・アム・ア・ヒーロー(2009~)が近年大ヒットしたばかりですしね、なんで同じことを何度もやるかな、って。

ただね、この作者、圧倒的に台詞回しがうまいし、登場人物同士の会話のキャッチボールを演出するのがシナリオライターレベルで達者。

籠城してる連中が20~30代ばかりで、命がけのサバイバルなのにテラスハウスみたいな様相を呈してる、というのも途中で読むのをやめなかった理由になってたりする。

いやいや終末SF(パニックホラー?)でラブコメやるか?って。

吊り橋効果が絶大な威力を発揮しそうなシチュエーションではありますが「ギリギリな状況下におけるグループ恋愛もの」をやろうと思いつく創作のセンスに私は感心しましたね。

しかしまあ、読んでてね、若いって、ほんとバカでどうしようもないなあ、って、つくづく思いましたね。

明日をもしれぬ危機的状況化にありながら、恋の駆け引きかよ、と。

なんだかふいに可笑しくなっちゃうというかね、そう感じさせる作劇がすごい、ってことなんですけどね、つまりは。

コンパクトながら作画がシャープでまとまっており、実に読みやすいのも好印象。

シンプルにね、漫画が上手なんですよね。

多分、この人は何を描いてもそれなりにこなしてしまうだろう、と思われる地力の高さを感じる。

これは多分、最終巻まで普通に楽しめるな、と2巻の段階で確信したんですが、えーすいません、ちょっと今、ストップしてます。

作者のやってることに何も問題はないと思うし、ストーリー進行も悪くないと思うんですが、経験則の問題でね、これまで私はあまりにもたくさんのゾンビものに触れすぎてしまったものだから。

初めて読んでるはずなのに、ウォーキング・デッド(米・TVドラマ)のシーズン10あたり(いわゆる、もういい加減に終わってくれ、みたいな感覚)を見てるような気になるんだよなあ。

自分の中で食傷な感覚が失せた頃に、また続きを読めれば、と思います。

ほとぼり冷ましてる間に新連載が始まってしまいそうだがな。

ゾンビものというジャンルにあんまり馴染みがない人にとっては、大当たりな作品であることは保証します。

若年層にも希求しそうな内容なのにハルタみたいな雑誌でも通用する、というのが凄いと思いますね。

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