2021年初出 細野不二彦
小学館ビッグコミックススペシャル

細野不二彦が漫画家デビューするまでを、半自叙伝的に描いたエッセイコミック。
若い人にはなかなか伝わりにくいものもあるかもしれませんが、80年代前夜当時のね、サブカルになにか新しいものが、大きな波となって押し寄せてきてる感じが、読んでて蘇ってきましたね。
ちょうど劇画からの転換期だったと思うんですよ。
ガンダムの放映が始まったのも1979年ですしね。
しかし、高橋留美子やあだち充と並んで80年代の少年サンデーに大革命を起こした細野不二彦が、人並み以上に自信のないコンプレックスだらけの青年だったことに驚きですね。
絵が下手だ、駄目だ、と作中で作者は自虐するんですが、いやいやあんたが下手だというなら今すぐ首括らなきゃならない漫画家が大量にいるぞ!とあたしゃ思わずツッコんでしまった。
かわいい女の子の作画にかけては右に出るものがいなかった作者の内面がこんな感じだったとは・・・と実に意外。
やはり漫画家はまんが道の頃から孤独を武器とし、満たされぬ思いを紙面にぶつけるものなのか、と。
いや、しらんけど。
スタジオぬえと関わりがあった、というのも初耳で。
ずっと不思議だったんですよ、なんで細野不二彦のデビュー作がクラッシャージョーなんだろう、って。
私は作者のことを、ある意味においては天才、と思ってるんですが、その天才も謙虚さや自信のなさに支えられてここまできたんだな、と思うと実に興味深いですね。
エッセイコミックながら、ファミリードラマとしての帰着点が物語の締めくくりになってるのも「さすが」の一言。
実話ベースの物語が中途半端な創作より面白かったりするのはよくあるケースですが、だとしても秀逸だったと思いますね。
近年の細野作品をあんまり楽しめなくなってた私にとって、久々に満喫できた一作。
続編描いてほしいですね、少年サンデー連載当時の裏話とか。
次作は青年誌に移籍するまで、で是非よろしく。