アラタの獣

2021年初出 本兌有+杉ライカ/羽生生純
エンターブレインビームコミックス 1~3巻(全4巻)

東京湾に突如隆起した島を舞台に、人外の力をふるうヤクザと女(主人公)の抗争を描いたSFアクション。

うーん、もう結論から書いてしまいますけど、これは強い作家性を武器に、長年第一線で活躍してきた羽生生純がやるような仕事じゃないな、と。

羽生生先生の良さが殺されちゃってると言ってもいい。

最大の失敗は「笑い」を完全に排除してしまってること。

よくわかんないおふざけやユーモアで、地獄のようなドラマを盛り立てる作劇が他とは一線を画して独特で孤高だったのに、手に馴染んだ武器を手放して今更シリアス一辺倒で勝負してどうする、って話でね。

変に真面目にやられちゃうとね、これまで気にならなかった部分がやたら目につきだしたりするんですよね。

とりあえずイマジネーションを絵にする能力はあんまり高くない、ってバレてしまったように思います。

ヤクザや女が超常の力を発揮する際にメタモルフォーゼするんですけど、この手の異形をデザインするセンスは恐ろしく乏しいと言わざるを得ないですね。

もうね、デビルマンになっちゃってるもの。

70年代かよ、って。

というか、本書の内容を鑑みるに、永井豪に作画頼めばよかったんじゃ・・と思ったりもした。

永井先生、お年を召してらっしゃるが、人外を描くことにおいてはパイオニアですしね、古いファンもきっと食いつくはず。

ギャラが無理か。

高いもんなあ、永井豪。

すまん、話がそれた。

いやね、本当はわかってるんです。

近作、全部コケてますしね、羽生生純。

原作者をつけて、起死回生の一発を、と目論んだのは痛いほどわかる。

ファンとしちゃあ、本当は絶賛しておすすめしたいところなんだけど、やっぱり嘘はつけないし。

言いたくはないが、クセの強い漫画ばかり描いてきた50代半ばの作家がやるには幾分畑違いだったか、という気がします。

しばらく休養して、何年後かに復帰する、というのがいいかもしれません。

島本和彦みたいに自伝的エッセイ漫画描く、というのも手かも。

残念だがミスマッチ、その一言につきますね。

ちなみにシナリオ自体はそれほど悪くないです。

斌(ひん)と呼ばれる生命体(宇宙から来たっぽい)同士の争いに、人間が利用されるという筋書きは、斬新とまでは言えないものの、それなりに顛末が気になりますし。

意外とね、ジャンプに投稿してる若手の漫画家向きの題材かもしれません。

今回ばかりは誰も得しない感じになっちゃいましたけどね。

というか、これが紙の本出でるならジュウマン(2014~)を紙の本で出してくれよ。

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