悪魔二世

2023年初出 志波由紀
エンターブレインハルタコミックス 1巻(以降続巻)

古い話で恐縮なんですが、この作品を読了して「エコエコアザラクって本当はこういうことがやりたかったんじゃないのか!?」と思った。

長年もやもやしてたものがようやくスッキリした、とでもいうか。

いや、それほど毎日エコエコアザラクのことを考えてたわけじゃないけどさ。

なんといっても本作が秀逸だったのは、本来生まれるはずのない人間と悪魔のハーフである女子高生(主人公、菊光)が、イレギュラーであるがゆえ最強であり、望めば何でも叶いそうなのに、普通に困ってる人を善意で助けたりする天然ボケキャラに設定されていることでしょうね。

この手のパターンってね、自分の出生がトラウマだったり、異形である自分自身に屈折した感情を抱いていたりするのが常だと思うんですが、主人公、あっけらかんと悪魔祓いに使う塩で、ゆでたまご食ったりしてますしね(爆笑した)。

変に多勢に溶け込もうとしてないし、かといって孤独を愛している風でもない。

常に自然体なんですね、何も気負ってない感じ。

昔から悪魔の子を描いた作品って、漫画のみならず大量に作られてきたと思うんですが、二世をこんな調子で描いた作品って、おそらく初めてじゃないかと思いますね。

一応ね、シリアスに物語は展開していくんですけど、最後は常に主人公の危なげな良識が物事を強引に解決してしまうのが地味に可笑しくて。

発想というか、キャラ作りの勝利かな、と。

ま、若干、作劇が未熟に感じられる点や、これは昔の少女漫画ノリだよなあ、と思われる部分が不安材料ではあるんですが、いまのところ「まだ総合的に判断を下すのは早い」という気がしてます。

私の場合、1巻で頓挫するケースが多いですけど、この作品に限ってはもう少し追ってみたい、と思いましたね。

あとは絵柄かな。

決してうまくはないと思うんですよ、線が細くて、どこか平面的でね。

もう少し写実的な絵が描けてたらすごいことになってたのでは・・と思うんですが、ま、仕方がない。

連載が続けばこなれていくことでしょう。

さて、主人公の目的である「お父さんに会うこと」はどういう形で叶うのか?

いや、お父さんって・・・・モノホンだよね?と興味はつきません。

まだこの先どうなるかわからない、わかりませんが、切り口の斬新な新作ではないでしょうか。

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