2022初出 ゆめじ
エンターブレインハルタコミックス 1~2巻
非常に画力は高いと思います。
描き込みの緻密さは半端じゃない。
フランスの出版社からデビューされてるんで、どういうペースの連載なのかわかんないんですけど、こんなの月一でも大変だぞ、と思う。
絵を見てるだけでも楽しいのは確か。
惜しむらくは内容。
色んな捉え方があるとは思うんですけどね、全然怖くない(黒くない)魔女といい、生態系(本作の場合は植物)が人間を見捨てる展開といい、ジブリ(というか宮崎)の影響が、どこか透けて見えるのがね、またか、って感じなんですよね。
色んな描き手が自分なりのジブリを漫画にしようと、過去、悪戦苦闘してきましたけど、私は成功例を見たことがなくて。
そんなのね、うまくいくはずがないんですよね、だってあれはもう宮崎駿で完成しちゃってるから。
なにも補完するものもなければ、あれ以上の展開もない。
そこがエヴァ・チルドレンとはちがうところ。
むしろ創作する側は、宮崎を避けて通ったほうがいい。
ナウシカやもののけ姫と似たようなことをやって、御大を超えられるはずがないんだから。
作者本人は宮崎とか意識してない、とおっしゃるかもしれませんが、それならそれで注意力が足りなすぎる、と言う他ない。
自分のやってることを俯瞰して見れてない。
ゆえに、物語に小さな矛盾(不可解さというべきか)が生じてくる。
だいたいね、植物も動物もほとんど居なくなってしまった世界でね、国家が成立して機能してる、って無理があると思うんですよ。
数十人が生き延びてるだけ、というならともかく。
そんな荒れ果てた世界で主人公のみが純粋培養された穢れを知らぬ乙女なのも疑問。
また、蝶よ花よ♡なお嬢様を、酸いも甘いも知り尽くした老魔女が育て上げた、というのがほんと理解不能で。
サバイバルを生き抜くべく、強い子に育てるのが普通じゃないのか?って。
結局ね、自分の描きたいことが物語を差し置いて、常に先行しちゃってるんですよね。
曰く、岩と砂だらけの荒れ果てた世界が描きたい。
曰く、無垢な少女が色んな経験を経て、少しずつ立派になっていく姿を描きたい。
それが素敵!と思える人はいいですよ、申し訳ないけど私は無理。
キャラクター先行でやりたいことだけを描き殴っていく手法もありかとは思いますが、この手の架空世界を描いたファンタジーで、そんな破天荒なことをやってる描き手は見たことがないですしね。
できない、ってことだと思うんですよ、これまで誰もやってない、ってことは。
ま、話の膨らませ方は下手ではない、と思います。
引きもうまい。
ただ、ここからさらなるステップアップを志すなら、いくつかの改善は必要になってくるでしょうね。
この手の世界観が好きな読者って、常に一定数いて、賛美の声も同数だけ聞こえてくると思うんですが、あえてね、それを遮って、仕切り直してほしいところではありますね。
才能ある人だと思うんで。