2023年初出 古日向いろは
双葉社 WEBアクションコミックス 1巻(以降続巻)
架空の国家、日倭津国を舞台とした戦国アクション・ファンタジー。
中世日本の戦国時代をお手本とした世界観で、刀や弓といった武器が幅を利かせており、一巻の段階ではテクノロジーはそれほど進化していない感じですが、超常を一手に担う存在として石の民、ってのがいて、彼らが戦乱のシナリオをかき回していきます。
面白いのは、石の民の間でも伝説化している人間兵器みたいな女が、主人公である領主の弟と、かりそめながらも夫婦の誓いを交わすこと。
なぜ夫婦の誓いを交わすことになったのか?は本書を手にとっていただくとして。
詳しくは書きませんが、嫁、封じ込められてたんですよね。
圧倒的劣勢にあった領主の弟が、偶然にも戦術核兵器みたいな女(嫁)の助力を得て、苦境を脱していく展開はありそうでなかったように思いますね。
「強い女」が好きな人なんかは読んでて普通にワクワクすると思う。
で、この作品が実に残念なのは、プロットは良かったのに、物語の進行がまるで少年ジャンプになってしまってること。
好き嫌いの感情をさておいて契約上の夫婦関係にあるわけだから、いろんな葛藤や逡巡、戸惑い、猜疑なんかがあってしかるべき、だと思うんですよ。
それがもーねー、出会って一昼夜も立たぬうちに素敵な共闘関係が成立しちゃってたりするんでね。
嫁の人外な力に恐怖を抱く描写とかあって当然だと思うんですが、それすらなしで、挙げ句には領主の弟にもなにか力が発現したりする始末。
大人が読んで楽しめそうな部分を全部すっ飛ばしてバトルに舵を切っちゃってるんですよね。
いや、これなら別に石の民とかじゃなくて、スタンドでいいやん、って。
乱暴な物言いなのは承知で書きますが、もうジョジョでいいじゃない、と。
また絵柄がねー、見事なアニメ絵でね。
好みの問題なのかもしれないですけど、どこを見ても奥行きが感じられなくて。
なんでこの人は集英社に持ち込みしなかったんですかね。
ジャンプ+に掲載されてたら、今よりもっと人気を博していた気がします。
物語の序盤は悪くなかったんですけどね、読み進めれば読み進めるほど興味を持てなくなってしまった作品。
ま、若年層の読者には刺さるかもな、とは思います、すごい売れてるみたいですしね。
完全に余談ですけどね、嫁と主人公の間に埋めきれぬ溝が歴然と存在する、みたいな設定だったら私も続巻に手を出していたかもしれませんね。