2023 日本
監督、脚本 庵野秀明
前半が大変なことになってるが、後半でなんとか挽回 終わってみればまごうかたなき庵野ライダー
おなじみ庵野秀明のシン・シリーズ第3弾にして、シリーズ最低の興行収入で大コケ、と話題になった一作。
とはいえ、この映画、約23億の興収記録してたりはするんですよね。
歴代ライダー映画ではトップの記録だとか。
そもそもシン・ゴジラ(2016)やシン・ウルトラマン(2022)が数字良すぎた、と思うんですよ。
前者が約82億、後者が約44億ですから比較しちゃあ可哀想、って話でもある。
踊る大捜査線シリーズみたいな怪物映画はともかくとして、大当たりと言われたおくりびと(2008)やテルマエ・ロマエ(2012)ですら興収60億程度ですからね、実写で20億突破すりゃ上出来だと思うんですが、駄目なんですかね。
それとも湯水のように制作費をかけたせいで赤字スレスレだとか。
この手の特撮で本作程度のクオリティのVFXなら10億程で作れるはずだけどなあ、違うのかな。
ま、制作側が思ってたほど数字がのびなかった要因はわかります。
物語の前提、本作においては改造人間という手垢のついた荒唐無稽を、ありき、で話進めちゃったのがまず失敗。
マーベルやDCですらマルチバースだー、別の世界線だー、AIだー、って言ってる時代に改造人間はねえだろ、って。
まず着手すべきは、改造人間という古びたコーディネートに現実味をもたせることだったと思うんですね。
それがいきなり冒頭で「君を勝手に改造したのは私だ」と科学者風の男が話し出すもんだから、現実味どころか、もう、振り返る間もなくついていくしかなくて。
またライダー1号が大きく混乱することもなくそれを受け入れちゃってるから、視聴者側としちゃあ、まあ、本人がかまわないなら・・・と納得する他なく。
おかげで前半は終始余所の世界の出来事みたいな感じでまるで入り込めず。
ルリ子のキャラ設定がアニメっぽい、というのも良くなかった。
ライダーと二人でいると、胡散臭さが倍増するんですよね。
ショッカーの目的である「持続可能な人類の幸福」ってのもわかりにくくてスッキリしない。
カルト集団のような位置づけはあんまり悪の秘密結社にふさわしくない気がして。
でもって極めつけは長澤まさみ演じるサソリオーグ。
あたしゃなにか勘違いしてる頭のおかしいコスプレの人かと思った。
・・・・庵野正気か、と。
変なキャラ付けといい、何もかもが痛すぎて、目が点。
正直ね、もうここで見るのをやめようかと思った。
そりゃこのざまじゃあ従来の熱心なライダーファンにしか相手にされんわ、と。
まともな大人なら、バカバカしすぎてついていけなくなること必定。
ま、どんなクソ映画であっても最後まで見ることを私は旨としてるんで、続きも見たんだけどさ。
その後、ようやく盛り返してきたのが、数十分が経過したのちの後半。
あー、こっちの路線に舵を切るのかー、と思いつつも、主人公が抱え込んだ悲壮感や2号ライダーの登場も相まって、少しづつ気持ちが高ぶってくる。
ああ、これは異形同士であるルリ子とライダー1号の物語だったのか、と終盤に至って悟る。
終わってみれば、これは間違いなく庵野のライダーだ、とひどく納得。
悪くはない、決して不出来ではない、ただ前半の不格好さというか不始末が、あまりにも悪目立ちしすぎた。
うーん、評価が難しい。
ライダーに興味のない人を取り込むのは難しいが、庵野秀明の名前に反応する人ならそれなりに楽しめる、といったところでしょうか。
シン・シリーズの中では、悲しいかな一番不出来と言わざるを得ないですけどね。
個人的には泡となって消えていく設定が、あとからしんみり響いてきたりはしました。
ねじレート 65/100