2024 日本
監督 原廣利
脚本 我人祥太、山田能龍
終盤に至ってようやくの盛り上がり。役者に救われた一作。
孤狼の血で一気に知名度を高くした柚月裕子の、警察ミステリー小説の映画化作品。
親友が殺された遠因が自分にある、と自責の念に責めさいなまれる県警広報課の女性が、権限も資格もないのに単独捜査に乗り出す物語。
ま、正直前半~中盤はね、退屈しないまでもよくあるタイプの刑事ものかな、って感じだったんですよ。
謎が謎を呼ぶミステリアスな展開というわけでもないですし、派手な仕掛けがあるわけでもないですし。
そもそも主人公の追う殺人事件自体が、当人以外にとってはあまり興味をそそられないものだったりする。
ひどいことを書くようですが、謎の不審死と銀行立てこもり犯が現在も籠城中じゃあ、間違いなく後者の方に衆目は集まるわけで。
そういう意味じゃエンタメ(サスペンス)として事件そのものが地味かな、と。
また監督がね、割と淡々と撮るタイプでね。
個人的には天才女優だと思ってる杉咲花もさすがにこの作劇では冴えない。
8割方、相槌打ってるだけですしね。
それと、警察みたいな縦割り組織でね、警察官ではない主人公が捜査にくちばし挟む(勝手に動き回る)とかありえない、と思うんですよ。
なんだか優しい上長さんたちの理解を得て、いつの間にか協力体制が成り立つんですけど、それ、絶対にないから。
そのあたりの現実味のなさが、なんか大昔の刑事ドラマとか思い出しちゃって(太陽にほえろ、とか)冷めた、と言うのもある。
ようやく盛り上がってくるのは終盤。
事件の真相が暴かれたあとのさらなるどんでん返しが白眉、といっていいでしょう。
これはね、正直予想できなかった。
公安が絡んでるからって、まさか公安が大きく存在感を増すとは思わなかった。
杉咲花と安田顕の白熱した演技が火花を散らすのも大きな見どころ。
終わってみれば、役者の演技に助けられた映画だったな、と思ったり。
つい数行前で「白眉」と書きながら手のひらを返すようですが、ちょっとね、どんでん返しがね、きわどいな、と思えるところもあるんですよ、そこまでやるか?みたいな部分で。
それをねじ伏せたのはまちがいなく2人の演技でしたし。
どんでん返しが成立し得たのは役者のおかげといって間違いない。
ま、私はオチを見破れなかったんであんまり大きなことは言えないですけど。
あと、ちょっとひっかかったのは、現実におきた事件をモデルに創作する安直さが目につくこと、ですかね。
ひとつじゃないですからね、しかも。
あ、これはあの事件のことだな、と想像を巡らせることによって本筋に雑音が混じるんですよね。
観る人にもよるんでしょうけど、私はツギハギなパッチワークのように感じられたり。
まとめるなら、面白くなかったわけじゃないが、杉咲花と安田顕がいなけりゃ大変なことになってた気がしなくもない、でしょうか。
サブスクとかで観る分にはいいかな、ってところですかね。
とりあえずタイトルは秀逸だったかもしれません。
ねじレート 70/100