2024 アメリカ/カナダ/シンガポール/インド
監督 デブ・パテル
脚本 デブ・パテル、ポール・アングナウェラ、ジョン・コリー
舞台設定に目新しさを感じなくもないが、やってることは普通の復讐劇
はて?デブ・パテル?なんの映画に出てた人だったかしら?と調べてみたらライオン~25年目のただいま~(2016)に出てた人だった。
近作だとグリーン・ナイト(2021)。
両方見とるがな、わし。
正直、あんまり印象に残ってなかったりするんだけど、それでもこの人がアクションをやるイメージはなかった。
じっくりと演技で魅せるタイプ、と思ってたんだがなあ、人は見かけによらぬもの。
なんせ8年の歳月を費やして映画化にのぞんだ、というのだからその執念たるや半端じゃなし。
なんとしてもやりたかったんでしょうね、このプロット。
ま、確かに気合は入ってる、と思います。
ノースタントで挑んだのかどうかはわかりませんが、体当たりで大立ち回りを演じているのは間違いない。
なにか格闘技の心得でもあるのか、それなりにキックやパンチのモーションもサマになってますし。
特に終盤の格闘シーンなんてスタッフの力もあってか、なかなか見事な仕上がり。
ジョン・ウィッククラスの斬新で目を見張るような動作設計こそないものの、アクション初主演でここまでやれたら上出来だと思いますね。
ただね、物語そのものに言及するなら、さほど目新しくもない、ってのが正直なところかと。
インドの架空都市が舞台で、ヒンズー教の聖典由来の神様がモチーフになってる世界観は独特だと思いましたが、やってることは普通の復讐劇なんですよね。
復讐を成し遂げるプロセスや着地点に、格別ひねりがあるわけでもない。
また敵役がこれでもかと悪人で。
判で押したかのようなステロタイプの人非人。
こんなサイコキラーみたいなやつが長年署長やれるほどインドの警察は腐ってるのか?と胡散臭く思えてくるほど。
一度、追い詰められて半死半生となり、その後、隠れて修行の後、再度殴り込み、と言う展開もまるで香港カンフー映画みたいで、やや興ざめでしたし。
良く言うなら「わかりやすい」、辛口に評するなら「シナリオ展開になんの意外性もない」。
うーん、ジョーダン・ピールはこの映画の何に惚れ込んだんでしょうね、わからんなあ。
異国情緒?
やっぱりね、モンキーとタイトルに冠するならね、いっそのこと、猿神ハヌマーンが憑依して主人公は人を超えた存在になった!ぐらいのハッタリをかましてほしかったですね。
マーベル・コミックみたいになっちゃうかもしれませんが、マーベルほど漫画的にせず、作品相応のケレン味を加えることって、できたと思うんです。
なんのための猿マスクでモンキーマンなんだよ、と。
せっかくシヴァ神やヴィシュヌ神を引っ張り出してきてるんだから、インド神話の世界観で物語の現実を改変する、ぐらいの冒険をやってほしかったですね。
終わってみれば、デブ・パテルはこんなこともやるんだ!みたいな驚きがすべて、だったかもしれません。
アクション映画としてのクオリティは高いと思いますが、ちょっと真面目過ぎたかも。
余談ですが、私は主人公の助けに駆けつけたおばちゃんの集団が、民族衣装をひるがえし武器を振るうシークエンスに一番ぐっと来ました。
いやいやそこじゃないだろ、って自分でも思う。
ねじレート 71/100