ゴジラ-1.0

2023 日本
監督、脚本 山崎貴

いったいいいつまでゴジラで飯を喰うつもりなんだろう・・・と制作発表当初はいささか呆れた30作目の国産ゴジラ映画。

ちなみに本作の半年後には、ハリウッド産ゴジラ✕コング新たなる帝国(2024)が劇場公開されてます。

みんな、どんだけゴジラが好きなんだよ、って。

ゴジラがいないと夜も眠れねえのかよ。

もうねー、日米でゴジラこすりすぎ

こすりすぎて指紋がなくなりかけてるから(誰の?)

こういうことを続けてるとスターウォーズサーガと同じで、ある日突然、従来のファンからもそっぽを向かれるぞ、と思うんだけど、-1.0、日米で大当たりしたからなあ、懲りずにまた短いスパンで作りそう(と思って調べてみたら前作から7年たってた。ゴジラVSコングが3年前だから、途切れず制作されているように感じたのかも)。

個人的にはシン・ゴジラ(2016)がゴジラ映画の総体とも言える決定版で、あれを超えるとか不可能、と思ってるんですが、ま、今回、超えないまでも比肩する仕上がりだった、と、言うべきなのかもしれません。

上手だったのはゴジラ映画の体裁を保ちながらも、微妙にゴジラからは目線をそらしていたこと

・・・・言われなきゃそうは思えない、ってのがミソで。

いや、絵的には大迫力ではあったんですよゴジラが暴れまわるシーンとか、熱戦を吐く場面とか。

さすがはアカデミー視覚効果賞を受賞しただけはあって本場ハリウッドと比べても遜色ない出来。

山崎監督の真骨頂と言っていいでしょうね、よくぞ日本映画でここまでやりきった!と礼賛したいレベル。

ただね、ドラマの中心にゴジラが主体として存在してないんですね。

なんかよくわからん巨大生物で放射能を撒き散らす災厄、としてゴジラは位置づけられてる。

極端な話、別にこれ、ラドンでもガメラでもゼットンでも良かったわけです、東京を襲うのは。

ストーリーの核にあるのは、ようやく戦後の焼け跡から復興しつつある東京を再度蹂躙する怪物と命を賭して戦おうとする民間の有志の生き様であり、共に立ち上がった飛行機乗りの死に場所を求める姿であって。

背景には、戦争から生きのびて帰ってきてしまった軍人たちの、いわれのない罪悪感であり、敗戦国ゆえのみじめさが見え隠れしていたりする。

ゴジラとタイトルされてますが、内実は復興と向き合う帰還兵たちのドラマだったりするんですね。

ある種、戦争映画、と言っていいでしょうね、これ、パッケージが怪獣なだけで。

1作目のゴジラ(1954)から更に10年ほど遡って、生々しい戦後とゴジラを抱き合わせる、という着眼点は良かったかもしれません。

こういう形でゴジラを使いまわしたのは初めてのケースだと思いますし。

内外で高い評価を受けたのも理解できる。

とはいえ、ガチなゴジラファンからしたら、ちゃんとゴジラと向き合ってない、という不満もひょっとしたら漏れてるかもしれない。

私はそこまで生粋のゴジラファンじゃないんでこういう料理の仕方でもかまわないと思いますが、あえてゴジラ愛で語るなら執着が低めな気はしますね。

私の場合、むしろ個人的に気になったのは、主人公のパイロットと、同居する女の揺れ動く心の機微をあんまりうまく描写できてないように思えたこと。

恋仲なのか、割り切った関係なのかよくわかんないまま気がついたらなんか相思相愛、みたいな展開はちょっといただけない。

恋愛、描けねえのかよ、って。

あと、最後のオチが完全に予想のできる三文芝居な着地で残念。

ゴジラで外堀を固めて、人間ドラマで勝負したのは利口だったと思うんですが、個人的には肝心の人間ドラマにもう少し細やかな演出があればなあ、といったところでしょうか。

これを「つまらない」という気は毛頭ないんですが、少々絶賛され過ぎかな、と。

怪獣映画らしからぬ重めの内容だったりするんで、ご覧になる方はあんまりドンパチばかりを期待しすぎることのないようご注意を。

ま、一時期の、救いようのない低迷期ゴジラ映画に比べれば断然面白いのは間違いないと思います。

ねじレート 81/100

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