2024 日本
監督、脚本 佐藤嗣麻子
場面場面で仕上がり具合に差がありすぎ。さらなる高みへと辿り着けるはずが、色々台無しに。
はて?なぜ今陰陽師?どこかで局地的に盛り上がってるのか?と色々調べてみたんですが、わからずじまい。
しかもゼロですよ、前日譚と言うか、ヤング安倍晴明が主人公、ときた。
いったいどこの、どういう人達のニーズを拾ったんだろう?と思うんですが、それなりにヒットしたみたいで。
ま、野村萬斎が主演した陰陽師(2001)から20年以上が経過してますしね、陰陽師自体を知らない人もきっといるでしょうし、物珍しさに食いついた人が結構いたのかもしれません。
オリジナルストーリーらしいんですが、夢枕獏が全面的に協力してるらしく、文藝春秋社刊行の陰陽師(小説)と同様、源博雅が晴明のバディとして登場します。
つまりは20年以上前の野村萬斎版陰陽師と世界観は地続き、ということ。
そう考えると、なんだかライトで身軽になったな、という気がしなくもありません。
ちなみに見ていて私が一番引っかかったのは、CGがあまりにも安っぽい点。
もうね、下手すりゃ昔のプレイステーションと見紛うようなグラフィックがたまにあったりするんですよ。
かと思えば火龍が暴れるシーンはちゃんと作り込んであったり。
なんなんだ、この定まらなさは、と。
背景や建物も同様。
これ、VFXなのかセット組んでるのかわかんないんですけど(多分、セットじゃないと思うんだが)同じテクスチャを全面に貼り付けたの?と疑いたくなるような、のっぺりした建造物があったり、あえて焦点を合わせずに撮ったのか?と言いたくなるようなぼんやりした景色が人物の背後に広がってたり。
細部にまで神経が行き届いてないんですよね。
最初は単純に予算の問題なのかなあ、と思ったんですけど、この雑な感じって、ひょっとしたら監督のセンスの問題なのかも、と途中で思ったりした。
あ、全然これでいいよ~みたいな感じで簡単にOK出してそう。
知らないけど。
というのもね、この佐藤嗣麻子って監督、あんまり絵ズラにこだわってないというか、無難な最適解を引き出す方法に疎い気がするんですよね。
その典型が奈緒演じる徽子女王の居室で、いかに平安時代と言えども部屋中に花びら敷き詰める馬鹿はいないと思うんですよ、私は。
花を撒きちらかしてた、と記述した文献なり史実を基にしてるのかもしれませんが、現代的感覚に照らし合わせて「変」だったらそれは改変すべきだと思うんです。
だって絵的に美しくもなければ、リアルを感じられもしないから。
むしろ「なんなんだこの部屋?」みたいな感じで、物語本筋以外のどうでもいいことに神経が削がれてしまう。
徽子女王の額正面にあつらえられた花にしたってそう。
なんで正面なんだよ、って。
しかも無駄にサイズでかいし。
私だけかもしれませんが、途中からこの花がね、トンネル工事に従事してるオッサン作業員のヘッドライトにしか見えなくなってきて。
暗くて危険なのかよ、って。
しかしよくぞまあここまで奈緒を、イモ姉ちゃん風に演出できるな、と逆に感心したりも。
全然キレイに撮ろうとしてないんですよね、なんか顔パンパンだったし。
染谷将太演じる源博雅も凄まじく田舎侍風(貴族だけど)のいでたちだったしなあ。
徽子女王と源博雅の秘められた恋路が大事なサブストーリーなのに、それをイモ姉ちゃんと田舎侍のズンドコラブアフェアにしてどうする、って話で。
この人に蜷川実花の半分でいいから美的センスがあればなあ、と思いましたね。
蜷川実花が好き、ってわけじゃないんだけどね。
ま、お話そのものは思ってたよりちゃんとしてた、と思います。
源博雅がなぜそんなに晴明を信頼してるのか、ちょっと分かりづらい部分もありましたが、相応に座りの良い落とし所が最後に待ち受けてましたし。
序盤に「ここからは現代語で」とことわりを入れられたのにはテンション下がりまくりましたが(コメディ見てんじゃねえんだよ)うーん、この際、目をつむろう。
正直、監督やるよりはシナリオライターに専念したほうがいいような気もしますが、陰陽師映画化は夢枕獏との約束、とあっては仕方あるまい。
あとは役者の問題か。
刷り込みかもしれませんけどね、私は野村萬斎の眼力と気品がやっぱり好きかな。
それと、アクション監督を努めた園村健介は今回もいい仕事してました。
園村健介にひっぱりあげてもらった部分は少なからずある、と思いますね。
ねじレート 68/100