2023 アメリカ
監督 アントワーン・フークア
脚本 リチャード・ウェンク
異郷の美しい風景と旅情がイコライザーをいつもと違って見せる
おなじみイコライザーシリーズの三作目、最終章。
なんせ1作目が2014年で、そこそこヒットしたもんだから、なんだかんだこすられたおして主人公ロバート・マッコールの存在自体がほとんどもうネタ化してるのでは?と私は思ったりしてたんだけど、それでも久しぶりにオープニングで「9秒」とか言われたりすると、まってました!と両手を打っちゃったりしたんで、やっぱりよく出来たキャラだったんだなあ、とあらためて考え直したり。
2作目の低調ぶりというか、しくじりが印象を悪くしてたのは間違いないですね。
はっきり失敗作と言っていいと思うんですけど、イコライザー2でロバートに見切りをつけた人は多いと思う。
私の友人もその一人で、THE FINALがネットやレンタルに並んだよ、と教えてやっても、いや、イコライザーはもういいわ、と冷めた反応。
でね、そんな人達に私は声を大にして言いたいわけです。
イコライザーはTHE FINALこそが最高傑作であると。
久しぶりにデンゼル・ワシントンのロバート見てテンション上がってるのかもしれないですけどね、それだけで最高傑作と言い切ってしまうほど前後不覚にボケちゃあいないんで。
そこはもう、信じてもらっていいんで(なにを必死に弁解しようとしてんだ俺)。
68歳で殺しのスペシャリストの役を飄々と演じてしまうデンゼル・ワシントンがとんでもなくすごい俳優だとあらためて認識した、というのも私の評価を支えた根拠。
特に今回、衝撃を受けたのが、序盤で背後から少年に打たれてしまった際の彼の演技で。
「9秒」とか言って余裕綽々だった人が、あらぬ方向に手足をくねらせ、見当違いに2度、3度拳銃を放つんです。
こればっかりは見てもらわないとなかなか文章では伝わりにくい、と思うんですけど。
今まで色んなアクション映画見てきましたけどね、予想外の狙撃にこういう反応を見せた主人公って、初めて見た気がしましたね。
そして、これこそが本当に驚いたときの人間の反応だ、とつくづく思った。
当代随一のアクション映画、ジョン・ウィックですらこんなことは誰一人やってないですよ。
さすがアカデミー賞2度、ベルリン国際映画祭2度受賞の名優がやることは違う、と感服。
いやもうイコライザーってね、はっきり言って漫画みたいだと思うし、こんな必殺仕置人みたいなオッサンはいねえ、と本気で思うんですけど、それすらも名優が演じると本物になってしまうのか、と。
今回はロケーションも良かったように思いますね。
アマルフィ海岸沿いの田舎町が舞台なんですけどね、非日常と言ってもいいぐらい美しい風景、町並みを背景に、傷ついたロバートが回復していく様子をじっくり描いていくんですよね。
なんだかヨーロッパの映画でも見てるようでね。
また同時に、街では異邦人なロバートが、地元の人達と交流する中で、はからずもこれまでの自分を見つめ直す展開は、どこか過去のスパイ映画や孤独なアウトローを描いた映画のようにも感じられて。
不思議な懐かしさを覚えるんですよね、見たことのない映画なのにもかかわらず。
アントワーン・フークワって、典型的な職業監督だと私は思ってたんですけど、意図はどうあれこれだけの演出ができるってのは侮れないぞ、と思いましたね。
いや、ちょっと見直した。
どこかね、晩年のイーストウッドが好みそうなストーリーだったりもするんですよ。
ま、終盤はいつものイコライザーだったりはするんですけどね。
中盤までの穏やかな進行があったから、後半の冷酷無比なサイコパスぶり(サイコパスじゃないってば)がギャップすごすぎてちょっと怖かったりもしました、今回は。
1作目の感想にも書いたけど、こんな人間兵器みたいなおっさん、放置しておいていいのか、と再度思った。
その危うさこそがイコライザーなんでしょうけどね。
余談ですが、デンゼル・ワシントンが最近のインタビューで「イコライザーは4作目と5作目にも出る予定」と語っていてびっくりしました。
・・・・・続くのかよ。
評判良かったんだな、おそらく本作が。
結局FAINALじゃなくちゃったわけだけど、今回みたいな芸当ができるなら次も見たい、と思いましたね。
ねじレート 86/100