2023 アメリカ
監督 マシュー・グッドヒュー
脚本 ブラッドリー・フォウラー
あのナマケモノが優秀なスラッシャーだった、というギャップを楽しむしかないが、それほど怖くも笑えもしなくて困る
なんでDVDのジャケ写が家政婦は見た!みたいになってるんだよ!と、まずはツッコんでおくとして。
そもそも今の若い人は家政婦は見た!を知らないかもしれないですね、家政夫のミタゾノは知っててもね。
ま、そりゃどうでもいいんだけど。
でまあ、多くを語るまでもなくね、このビジュアルやタイトルから本格サスペンスや心温まるアニマルムービーを期待する人はまずいない、と思うんですが、だからといって笑いに特化した優秀なホラーコメディというわけでもない、というのがこの作品のやっかいな点でありまして。
いや、思ってたよりはちゃんと作ってあるんですよ。
女子大の寮に、マスコットとして飼われることになったナマケモノを軸にお話は進んでいくんですけど、登場人物の書き分け(キャラ付け)はちゃんとしてるし、美術やロケーションにもそれなりにお金かかってましたし。
今どきCGを使わずにアニマトロニクスでナマケモノを動かす、という選択も、賢い賢くないは別にして、なんかこだわってそうですし。
けれどね、残念ながらあれこれ既視感強い上に、基本空回りしてるのが現状だったりするものだから。
おそらくね、ナマケモノののんびりした性質や、スローモーな動きからは想像できない殺戮アニマルぶりをギャップとして面白がってもらいたかったんでしょうけど、肝心ななぜこの個体に限って凶暴で優秀なハンターなのか?という不思議に、作中で一切言及しないのが物語の欠落として、まずあって。
もともとジャングルにいたやつが密猟された、という筋書きなんですけど、群れ全部がこんなやつだらけなはずもないんで。
なんせキラーナマケモノ、スマホ使ってSNSチェックしたり、車運転したりもするんですよ。
もう、動物の範疇を超えとるじゃないか、と。
ミーガン(2023)並に知能も運動能力も高かったりする。
そんなのがね、存在の特異性になんの理由付けも根拠もないまましゃあしゃあと連続殺人してたりするもんだから、えっ、これはチャッキーと同じようなものなの?とこっちが気を使って正体を探ってやらにゃあならん有り様でね。
結局、何者なのかよくわからないうちは、何が出来て何が出来ないのか、その能力値の上限はどのあたりにあるのか、すべてがわからんものだからお話にのれないわけですよ。
だって後出しジャンケンが可能なわけだからね。
例えばずたずたに引き裂いて殺した後で、なぜかちゃっかり復活してても、得体の知れなさゆえなんとでも言えるわけですから。
それのどこにスリルやドキドキが?って話なわけだ。
ナマケモノがスラッシャーだったら面白い絵になるんじゃね?と思いつき、そのアイディアだけで最後まで突っ走ってしまったような作品でしたね。
プー あくまのくまさん(2023)とかもそうだけど、何でもかんでもホラーの枠組みに落とし込めばいいってもんじゃないからね。
こだわりのアニマトロニクスも作り物感を加速しただけだったしなあ・・・。
一部のマニアはそりゃ喜ぶんでしょうけど。
ま、この内容で最後に自然保護を訴える展開には少し笑ってしまいましたけど。
なにが「おうち・・」だバカ野郎、と思わずツッコんじゃったよ、ああ、罠にハマったか。
全力でバット振ってくるけどかすりもしない脱力なホラーです。
お好きな方々で楽しめばいいんじゃないでしょうか。
ねじレート 52/100