2022 イギリス
監督、脚本 トーマス・ハーディマン
おばちゃんとゲイがずっと噂話してる映画
ヘアコンテンスト当日に、楽屋で頭皮を剥かれた状態で死んでいたカリスマ美容師の遺体発見後の顛末を描いたミステリ。
事件がおこったすぐその後から物語が動き出す、というのが、どこか古風な探偵小説のオープニングのようで期待できるかな、と最初は思ったんですけど、いやいやこれがねえ。
ワンショット撮影で101分(実はちょっとだけ編集してます)、ってのが作品のセールスポイントのひとつみたいなんですが、とりあえず臨場感を喚起する役割は果たしてたと思います。
カメラが途切れずに色んな人を追っていくんで、事件後の周りの人の混乱や喧騒が同時進行で一緒に体感しているように感じられたのは確か。
ただね、事件が真相に迫っていくまでが恐ろしく長いんですよ、この映画。
もう全然警察も探偵もやってこないもんだから。
ヘアコンテンストの他の参加者や美容師の、噂話とも素人捜査ともつかぬおしゃべりを延々見せられる羽目になる。
やはりね、ミステリなんで、少しずつ事件の謎を解き明かしていってほしいわけですよ、私は。
あの人はああだったとか、あの人はそういうところがあったとか、給湯室の茶飲み話みたいなのに全く興味は持てないわけで。
知らんがな、と。
もうね、ただただかまびすしいこと、この上ない。
美容業界?の裏側とかに興味のある人は楽しめるのかもしれませんが、一向に真相へとたどり着く気配のない脱線だらけの会話劇に私は辟易してしまった。
臨場感たっぷりなのに見てて疲れる、ってどういう現象なんだこれ?と。
ま、撮影の手法はバードマン(2014)と同じなんですけどね、今振り返るならバードマンは比較的広い層が興味を持てる題材を取り扱ってたんだなあ、と改めて思ったり。
当時はとっつきにくい、と思ったんですけどね、全然楽しめた気がしますね。
いや、高い力量のある人だと思うんですよ、監督のトーマス。
おそらく脚本はとんでもない厚さだったろうし、マシンガントークし続ける演者をコントロールしてワンショット撮影を形にする計画性、構成力も新人離れしてる、と感じたんですが、できれば舞台は美容業界じゃないほうが良かった、というのが私の感想。
これはもう好みだからどうしようもない。
また、事件の真相がねえ、ちょっとわかりにくい感じで撮られててねえ。
頭皮剥ぎ取った理由とか、なんかもう全然弱くて。
センセーショナルだったのに、そんなことだったのかよ、アメリカ先住民の仕業だった!(すげえベタ)、とか、それぐらい吹かしてくれよって。
最後ぐらいスッキリさせて、と思うんですが、終わってからもなんかもやもやするという。
近所のおばちゃんの話に1時間以上つきあわされた気になる映画でしたね。
全く別の題材で監督がどういう映画撮るのかは少し気になりましたが、この映画に関しては私はもういい。
ああ、これは確かにA24が好きそうだなあ、とは思いました。
ねじレート 70/100