2023 イギリス/アメリカ
監督 ガイ・リッチー
脚本 ガイ・リッチー、アイバン・アトキンソン、マーン・デイビス
いかにも監督らしいスパイ活劇で満腹
100億円で闇取引される正体不明のブツを回収するために送り込まれた、MI6直下の秘密工作員の活躍を描くスパイアクション。
秘密工作員のリーダー、オーソンを演じているのがジェイソン・ステイサムで、なにやらその凄腕ぶりがMI6に評価されていて、作中ではMI6と主従関係というよりは対等の契約相手、といった風。
結構わがまま言ったりもしてるんで、相当な功績があるんでしょうけど、なんでMI6が外注ではなく自前のスパイを使わないのか?は不明。
そのあたりの裏事情が多少なりとも描かれていたら、さらに現実味が増したか、と思われるんですが、オーソンのキャラをミッション・インポッシブルのイーサン・ハントのように際立たせることを、まずは優先したかったのかもしれません。
それが成功していたのかどうかはさておき。
若干ね、漫画っぽい温度の作品ではありますね。
このユーモアセンスはまさにガイ・リッチーだな、とほくそ笑むものなんですけどね。
普通に面白いのは間違いないです。
この人、シャーロック・ホームズ(2009)ぐらいからずっとはずしてないんじゃないか?と思われる安打製造機ぶりにはつくづく感心するんですが(キング・アーサーの大コケは別として)、同時にね、これぐらいはガイ・リッチーなら手癖でやれてしまうんじゃないか?と思える既視感の強さをやや感じたりもするんですね。
乱暴な言い方をするならジェントルメン(2020)とコードネームUNCLE(2015)を足して二で割ったような感じですし。
少なくとも全く冒険はしてない。
もうすぐ還暦を迎えようとする監督に冒険とか、酷なことを言ってるような気もしますけど、間違いなく良く出来てるし、完成度も高いのに、意外と世間からの評価が低いのはそのあたりに原因がある気がします。
観客はわがままですからね。
ちょっと似通ってるだけで、安牌だの、焼き直しだのあれこれ言い出しますから(断じて私のことではない)。
とりあえずジェイソン・ステイサムはね、5回目だろうが6回目だろうがガイ・リッチーの映画に時々出たほうがいいですね。
いつまでも肉体派じゃしんどいだろうし、MEGザ・モンスターとかああいう映画ばっかり出演してるとバカに見えてくるから。
やっぱりグレッグみたいなキャラを創造して演出するセンスって、誰にでもあるものじゃないと思うんですよ。
グレッグにヒュー・グラントを抜擢する感覚も常連とはいえ納得ですし。
キャラクターがね、脚本の底上げをしてるんですよね。
サブキャラ全員が活き活きしてる、と言っていいかもしれない。
なんだか主人公オーソンが一番定まらないキャラのような気がしてきたな、あれ?
ていうかね、こうやって検証してるとなんでこの作品の評価が低いの?面白いじゃん!って反駁したくなってきたなあ、私。
ま、安定を退屈ととるか、今回も裏切らずにやってくれた!と喜ぶかの違いでしょうね。
変わらぬ独自性を今も堅持していることは間違いないです。
どことなく70年代っぽいスパイ活劇の香りがするのも好きかな。
ねじレート 75/100