2023 フィンランド
監督、脚本 ヤルマリ・ヘランダー
修辞としての不死身ではなく、ほんとに不死身な老兵に唖然
第二次世界大戦末期のフィンランドを舞台に、不死身の老兵とナチス軍の攻防を描くアクション映画。
まあ、やりたいことはわかるんですけど。
わかるんですが、生物学的な臨界点を超えて不死身だったりするとね、やっぱり冷めちゃうわけですよ。
ネタバレ覚悟で書きますけど(神経質な人はこの先、読まないように)首吊られて数十分経過してるのに死なないとか、もう人間じゃないからね(ごく至近距離で爆弾が爆発しても死ななかったな、そういえば)。
息をしなくても死なないのは、なにか理由があるのかな?としばらく物語進行を注視していたが、解説は一切なし、ときた。
同郷の女共は「彼は一切諦めないから」としか言わないし。
いやいや諦めることなく不屈の精神の持ち主であれば死をも超越するのかよ、って話だし。
ファンタジーじゃねえかよ、って。
私、駄目なんですよね、この手のやったもん勝ちでルールの曖昧なファンタジーって。
ファンタジーならファンタジーでもいいけど、何ができて何ができないのか明確にしてくれよ、って。
絶対に死なない前提で見るアクション映画ほどつまらないものはなくてですね。
ま、老兵がたった一人で傷だらけになりながらナチス・ドイツの小隊と一戦交え、徐々に追い込んでいく展開は悪くなかった、と思います。
やってることはランボーでしかなくても、無敵のじじいというキャラクター性が際立っていたのは確か。
孫が居てもおかしくなさそうな風貌なのに、馬鹿みたいにタフで強すぎてやばい(結構苦戦はしますが)とか、普通に痛快ですしね。
主人公に一切のセリフがない演出(最後に一言ありますけど)や、ヨーロッパの映画らしい間や章立てもこの手のバイオレンス映画らしくなくて良かった。
うーん、返す返すも首吊りは余計なシーンだった、と思う次第。
あれがなきゃあ、もう少し素直に楽しめたんだがなあ。
Mr.ノーバディ(2020)を楽しめた人なら刺さるかもしれません。
かの作品のようなコメディっぽさは全く無いですけどね。
・・・と、ここまで書いて「主人公が首吊られても死ななかったのは、磔台にささったボルトに右足かけて首の負担を軽減していたから」とネットに書かれているのを発見。
あー、そういえば撃たれた右足でなんかやってたわ、そういうことだったのか、なるほどなあ!見落としてた・・・・って、いや、死ぬだろ。
余談ですがツルハシ一本で敵に向かっていくのは終盤、最後の戦いのみです。
近代兵器さえもツルハシで跳ね除けるツルハシマスター、ってわけじゃありません。
「ツルハシ一本でナチスをうつ」はいささか過大表現かと。
フィンランド本国で大ヒット、アメリカでもあたった作品らしいですが、私はもういいかな。
仮に続編があったとしても見ることはなさそう。
ねじレート 55/100