オーストラリア 2022
監督、脚本 ダニー&マイケル・フィリッポウ
観たあと、絶対に言ってみたくなる、TALK TO ME・・
確実に霊を呼ぶ(見る)事のできる小道具を手に入れた高校生たちの、悪夢的末路を描いたホラー。
それほど手が込んでいるわけではないし、目新しいわけでもないんですが、私がまず唸らされたのは、猿の手にも似た呪物(切断され、エンバーミング加工された人間の手)を用いて、誰もが等しく霊と接触できる状況を設定してみせたこと。
これはありそうでなかった秀逸なアイディアだったと思いますね。
霊の世界ってね、やっぱり胡散臭いわけですよ、多くの人にとってね。
霊能力者にしか見えないとか、物理的(科学的)に証明できないとか、言ったもん勝ちみたいな状態がずっと続いてきたように思うんです。
信じないのはあなたの勝手、みたいなね。
実際に霊が存在することをどう証明するか?という点に多くの「信じる人達」は注力してきたと思うんですが、この作品は、そこを『あるなし』じゃなくて、呪物を介すれば誰でも見えてしまうんだからしょうがなくね?と単なる法則にしてしまった。
いやこれはすごい発想の転換というかコロンブスの卵だったな、と。
いかにも訳知り顔で、霊とか死後の世界を語る得体のしれない連中の出しゃばる隙が一切なくなってしまったわけですから。
これほど明快なことはない。
とりあえず決められたルールを守っておけば大丈夫、とした点も現実に即していて巧い。
医学的に証明されてはいないが、この薬物を用いてこういう処理をすれば決まった結果を導く事例とか、医療の世界では割とありますから。
わからないがコントロールはできる、ってのがね、心霊の枠組みをシンプルにアナライズしていて小気味が良い。
でまあ、そんなゲーム性の高い状況下で、高校生とか馬鹿だからルールを守らないやつが出てきて、なんかおかしなことになってきちゃう、ってのもね、自然な成り行きって感じでよく出来たシナリオだったと思いますね。
監督はドラッグに依存する若者たちの姿にヒントを得た、といってますが、主人公のミアを含め、登場人物たちのぶっ壊れっぷりがまさにそれでね、演出上は霊障なんだけど、彼らの奇行ぶりが精神的な問題とも捉えることができるようになってて、物理法則を無視してないのが賢いな、と。
いろんな事象をあえて断定していかないんですよ。
すべてが虚々実々としたまま、ミアの母ですら本物なのかどうかもわからない。
ただ狂気だけが醸造されていく。
圧巻だったのは終盤。
なんとなくそうなんじゃないかな、とは思ったんですが、まさか世界丸ごと変転させるとは・・・とびっくり。
特にラストシーンの鮮やかさはお見事、と言う他ないですね。
ここ数年、ホラーの新星が映画界では続々と登場してますが(アリ・アスターとかデビッド・ロバート・ミッチェルとかフェデ・アルバレスとか)、個人的には頭一つ抜きん出て優秀、と思いましたねフィリッポウ兄弟。
いや、久しぶりに怖かった。
中途半端にハッピーエンドにしなかったのもA24らしくて良し。
あと、やたら映像がキレイだったんですけど、これは機器のおかげ?それとも技術?
どうあれ、傑作だと思います。
ホラーファンは必見。
ねじレート 92/100