2022 スペイン
監督、脚本 カルロタ・ペレダ
絵のインパクトはすごいんだけど、描きたかったことは、実は別にあり
偶然シリアルキラーの女子高生拉致現場に居合わせてしまった巨漢ないじめられっ子の選択を描いたサスペンス。
ルッキズムだ、なんだと最近うるさいんで、あんまり大声では言えないんですけど、それにしてもこのフライヤーのインパクトは強烈だな、と。
女装した相撲取りが張り手で一般人を殴り殺したのかと思ったよ、私は。
なんかもう見ちゃいけないものを見た感じというか、できれば関わらないほうがいい、とここまで強く確信できる絵ってなかなかないと思いますね、マジで。
誰がこのワンシーンを宣伝に使う、と決めたのか知らないけど、怖いもの見たさな大衆心理を見事ついとるなあ、って。
しかし主演のラウラ・ガランはよくぞまあ出演をOKしたことだな、と思いますね。
はっきり言ってひどい扱われようなんですよ、劇中のラウラ演じるサラって。
これでもかとデブを辱める演出で、同級生から容姿をネタにいじめられまくってたりする。
オカンはそんなサラを全く理解せず、自分の価値観を押し付けるばかり。
どこにも逃げ場がないんですよ、サラ。
私はできたらもう少し痩せてる娘のほうがいいんだけど(何の話だよ)、そんな私ですらサラが気の毒に思えてくるほど。
まだ若いだろうに、こんな風に体当たりで何もかもさらけ出すような役に挑まなくてもいいのになあ、ラウラ・ガラン、って思うんですけどね。
可愛いぽっちゃり女子として撮ってくれる映画が他にありそうなもんだけど。
メリッサ・マッカーシーとか、若い頃はその路線でしたよね。
監督に懇願されたのかなあ、君しかいない!みたいな感じで。
ひでえやつだな、しらんけど。
それはさておき、とりあえず物語の前半は、前述したようにサラがひたすらいじめられてるんでなかなかしんどいものがあります。
なにやら妙な展開に舵を切るのは物語中盤から。
口数が少ないんで、よくわからないんですが、どうやらね、シリアルキラーはサラに一目惚れしたっぽいんですよね。
ああっ、こんなところに需要と供給がああ(デブ専?)って、なんてところに救いを用意するんだよ、鬼畜か、監督、と私は思ったりした。
彼氏は殺人鬼♬って、ハネムーン・キラーズ(1970)かよ!って話だ。
いやいやサラ、まだ若いのに、破滅しか待ち受けてねえじゃん!って。
そしたらだ。
私の予想を覆して、物語は思わぬエンディングを迎えることとなる。
ああっ、そういう選択をしたのか、サラは、と少し驚く私。
このお話って、実は誰が一番真っ当なのか、を描いてたりするんですよね。
ちょっとずれるかもしれないけど「真っ当」を「心優しい」に入れ替えてもいいかもしれない。
サラがあんまり喋んないんで、伝わりにくいものがあるんですが、料理の仕様によっては感動的な一作になったのでは?という気もしますね。
監督は割合さらっと流しちゃってるけど、撮る人が違えば号泣必至の美醜を問う作品と注目されてたはず。
そこまで踏み込めなかったのはやっぱりまだまだ未熟、というか経験が足りないんだろうなあ。
いまのところどこかゲテモノっぽいカテゴリーに押しやられてるような。
ま、次かその次ぐらいで化けるかもしれません、カルロタ・ペレダ。
デビュー作にしては挑戦的、と言っておこう。
ねじレート 60/100